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『カイロの紫のバラ』
【感想】 ★★★☆ H22.2.28

 ウディ・アレン作品の中でも、特に映画ファンの間で人気の高い作品『カイロの紫のバラ』を観る。ウディ・アレン作品はどうも苦手とか、自分で主人公しない方がいいとか、結構好き嫌いが分かれるんだけど、本作は彼の最高傑作と呼ぶ人も多く、なによりアレン自身もっとも気に入っている作品のひとつということで、かなり期待させる作品だった。

 大恐慌時代のアメリカ、ニュージャージーで仕事もせず遊んでばかりいるうえに、暴力まで振るう夫のために、ウェイトレスとして働くセシリア(ミア・ファロー)の楽しみは、劇場で映画を観ることだけだった。その日も夫に愛想をつかして家を飛び出したが、いく当てもなく、いつしか劇場へと足を運んでいた。上映中の「カイロの紫のバラ」はもう5回目だったが、いつしか夢中で見ていたセシリアに、突然スクリーンの中の登場人物の一人トム・バクスター(ジェフ・ダニエルズ)が話しかけてきた・・・。

 アレン自身は監督に専念し、いつものたたみかけるセリフもなく、シニカルな笑いも封印し、どこまでもロマンチックなラブストーリーに仕上がっており、アレン監督作としては異色の作品となっている。スクリーンの中から抜け出てきた俳優と、恋に落ちてしまうという奇想天外なストーリーは、スクリーンの中の世界と現実の世界を巻き込んで、予測不能の展開を見せる。ただ薄幸なセシリアに、神様のマジックが舞い降りたような、ロマンチックな恋のゆくえにワクワクしながらも、かなりの確率でハッピーエンドを予感させるが・・・。
そしてラスト、劇中のミア・ファローと、まったく同じ気持ちで映画を見てる自分がそこにいた。なんという見事なラストなんだろう。ウディ・アレンのすべてがこのラストに集約されていた。そうだよね、映画は至福の時を与えてくれるが、所詮は夢の世界。それでも映画を愛さずにはいられない、映画が好きなすべての人に捧ぐ、みたいなウディ・アレンのメッセージを勝手に感じ、なんとも幸せな気分に浸る(^^)