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『ライフ・アクアティック
【感想】 ★★★☆ H17.9.25
ライフ・アクアティック 「人生は、海だ!広く、深く、そしてショッパイ」。前作『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』でポップなユーモア・センスをみせたウェス・アンダーソン監督の『ライフ・アクアティック』を観る。何を勘違いしたのか、アカデミー賞の最優秀脚本賞ノミネート作品とばかり思ってたんだけど、それは『ザ・ロイヤル・・・』の方だった。その作品もジャケットの写真から面白くないと判断し観てないので、初ウェス・アンダーソンなのだ。一瞬不安がよぎる・・・。

 初老の海洋ドキュメンタリー映画監督にして海洋冒険家のズィスー(ビル・マーレイ)は、ここ数年ヒット作に恵まれずにいた。しかも前作では長年の相棒を、撮影中に幻の怪魚”ジャガーザメ”に食われてしまうという悲劇に見舞われながらも完成させた作品まで酷評される始末。なんとか相棒の復讐と自身の名誉挽回のために、”ジャガーザメ”の姿を追って再び航海へ出ることを決心する。突然現れた息子と名乗る青年ネッド(オーウェン・ウィルソン)や妊娠中の女性記者ジェーン(ケイト・ブランシェット)も加わって、チーム・ズィスーは波乱の海へと乗り出すのだった。

 不安が的中したのか、最初の30分で眠気が襲ってきて、一時中断(笑)。こ、これはちょっと失敗したかも・・・。そして日をまたいで続きを観る。字幕を読んでるとまた眠くなりそうな気がしたので音声を吹き替えに変更(こゆとこDVDはいい
ねえ)。その吹き替えも良かったのか、船が出港してからは人の研究所から最新機材は盗むは、海賊に襲われるはどんどん面白くなる。そしてそんな中でもその独特のマッタリとした嘘っぽい探検隊のグズグズ感は、私の笑いのツボを直撃する。主役のビル・マーレイはあまり好きな俳優ではなかったが、『ロスト・イン・トランスレーション』の意外な演技派振りに驚き、本作でこんなにユーモアのセンスがある俳優だったんだと感心。アンダーソン監督が主役はビル・マーレイと決めていたとおり、最高のコメディアン振りをみせる。いや〜、しかしビル・マーレイはいつの間にこんな凄い存在感を身に着けたのか・・・。そしてそんなビル・マーレイよりさらに私を笑わせてくれたウィレム・デフォー。ズィスーを父のように慕うチームのエンジニアのクラウスを演じるデフォーの涙ぐましいけなげな姿は、かなり少ない出番にもかかわらず、一番おいしく強烈な印象を残す。

70年代のシンセサイザーの音楽や、わざと合成っぽく挿入されるCGや、ドキュメンタリーなんだけどいかがわしさを拭いきれないなど、昔こんな番組あったなあみたいな、不思議なノスタルジーを感じさせる。昔は今みたいにほっといてもいろんな情報が流れ込んでくる時代でもなく、何もかもが目新しく新鮮で、美しいもの見ては美しいと感動し、不思議なものを見ては驚き、みんなが純粋だった。この映画を観てると、大の大人達が何やってんだか、みたいな感じが全然しなくて、どんどん気持ちが素直になっていくような、ちょっと上手書けないけど、ラストのズィスーの何気ないセリフにもジーンとしてしまった。

あとこのDVDは2枚組で、DISC2に入っている映像特典で、イタリアのトーク番組に出演するアンダーソン監督と共同脚本を勤めたノア・ボーンバッハのビデオシーンがあるんだけど、これが最高に面白い!俺様状態で椅子にふんぞり返って二人に次々と難しい質問をするこの番組の司会者の男の嫌味なとこと、明らかに質問の意味が分からず当惑する二人の様子が、見てて気の毒やら可笑しいやら。仕事とはいえお疲れ様でした(爆)