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『ホビット 決戦のゆくえ』
【感想】 ★★★★☆ H26.12.26
 “かけがえのない、仲間たちがいた―。”
 「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソンが新たにその前日譚を描いた、J.R.R.トールキン原作「ホビットの冒険」三部作の最終章『ホビット 決戦のゆくえ』を観る。前作「ホビット 竜に奪われた王国」でまさかここでという唐突なエンディングを見せられ、どうしても早く続きが見たくなり劇場に行くことに。そこで待っていたのは、思いがけず涙涙の完結だった。

 長い旅の末、故郷のエレボールにビルボとドゥリン一族の王トーリン率いるドワーフの仲間たちはやっとたどり着くが、ドラゴンのスマウグを湖の町に解き放ってしまう。スマウグにより町は瞬く間に炎に包まれるが、逃げ惑う人々の中ただ一人、スマウグに弓矢を向けるバルドの姿があった・・・。

 やはりどうしても「ロード・オブ・ザ・リング」と比べてしまい、物語のスケールの小ささからこのシリーズを甘く見ていたが、観終わった今、「奪われた王国」のレビューで二匹目のドジョウなどとレビューしてしまったことを大いに反省している。ピーター・ジャクソン監督は、前シリーズに負けないくらいの完璧な旅の終わりを用意していてくれた。オープニングの大迫力の映像から始まり、サウロンの影が中つ国に忍び寄っていく展開に、次から次へと登場してくる懐かしいキャラクターたちにワクワクさせられ、ラストは思いがけず予想外のことが待ち受けていて、ちょっといままで記憶にないくらい、涙がボロボロと流れてしまった。「ロード・オブ・ザ・リング」では、登場人物たちがすべて邪悪なものから中つ国を守るために、民のためにという大きな意志を共有して戦いに身を投じていたが、今回は一人一人が愛する人のために、家族や友のためにと身近な誰かのためにそれぞれが戦いを挑み、誰もがひどく人間臭く、情に流される姿がいじらしく、より登場人物たちに感情移入出来る様な演出がされていた。同じような作品を焼きまわしするんじゃなく、それでいて同じ世界観を見事に再現するという、やはりいい仕事をしますピーター・ジャクソン、素晴らしい。

クライマックスの三つ巴の戦闘シーンをはじめ、最終章ということもありかなりの枠を大掛かりな戦闘シーンに費やしていて、相変わらず凄まじいほどの大迫力の映像を見せつけてくれたが、やはり「ロード・オブ・ザ・リング」を既に見てしまっていたので、さほど目新しさはなかった。ただねえ、ここでまた監督はとっておきのシーンを用意していてくれた。敵味方入り乱れての集団戦だけではなく、緊迫の一対一のガチンコの対決を、じっくりと見せてくれるという贅沢なシーンも盛り込まれていたのだ。思わずこれがみたかったんだよなあと、心の中で叫んでいた。他にもファンを熱くさせるシーンが目白押しなんだけど、その中でも私の一押しは、最高のタイミングで現れるエルロンド卿かな。思わず誰にも見られないように小さく拍手をしてしまった。あとシリーズの顔であるガンダルフは、そういえばガンダルフって捕まってたよね、って登場した時に思わず思ってしまうほど、今回は影が薄かった。そして相変わらず魔法使いと言いながら一切魔法は使わずに、杖で戦うというよくわからない微妙な存在だったなあ。

エンドロールで流れるBilly Boydの「The Last Goodbye」を聞きながら、いつまでも浸っていたい旅の余韻と、前シリーズもひっくるめて一緒に旅をしてきた愛すべき登場人物達への惜別の思いに、なんだか泣き疲れたことも含め、明るくなったあとも館内でしばらく座ったまましんみりとしてしまった。ああ〜、長い長い冒険の旅がとうとう終わっちゃったんだなあ。いやいや、ここからまたあの冒険が始まるんだよね。また「ロード・オブ・ザ・リング」を観るしかないか(^^)