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『ダークナイト』
【感想】 ★★★★☆ H21.1.5

ダークナイト 前作『バットマン・ビギンズ』のスタッフ・キャストが再結集し、全米で公開されるや瞬く間に興行収入の新記録を樹立した続編『ダークナイト』を観る。ティム・バートン版『バットマン』が大好きだった私は、前作をまったく評価できなかったため、劇場公開をスルーしたんだけど、あまりにも評判がいいので期待せずに見ることに。いやあ〜、やっちゃいました、こんなにどえらい作品だったとは(^^;)

 ゴッサム・シティ、白昼堂々と銀行を襲う一団。そして仲間を次々と殺しながら、一人鮮やかに去っていくジョーカー。一方日々悪と戦うバットマンと警官ジム・ゴードン、そして新たに協力者となった検事ハービー・デントの活躍により、犯罪組織は一掃されるかと思われた時、追い詰められたギャングのボスたちは、バットマン殺害をジョーカーに依頼する。

 まずキャスティングだけど、前作に引き続きバットマンを演じるクリスチャン・ベールだが、なぜか顔を出しているシーンの印象が薄く、バットマンのストイックさと重なるシーンもあまりなく、もっとブルース・ウェインとしてのダークな部分も出して欲しかったかな。対して宿敵ジョーカーを演じるヒース・レジャーの、カオスのオーラが見えそうなほどの存在感は、バートン版のジャック・ニコルソンを凌駕する。あとケイティ・ホームズに変わってレイチャル役となったマギー・ギレンホールについて不満が残るが、マイケル・ケインにゲイリー・オールドマン、さらにモーガン・フリーマンまで出演してるとなれば欲張りすぎかな。でもこの三人がすれ違ってもいいんで、揃って映ってるシーンも見たかったな(さらに欲張りすぎか)。

ストーリーについては、なかだるみする場面もあるが、執拗にジョーカーというカオスを見せる事によって、人としての狂気の狭間を観客にさらしてなお、単に悪と正義の戦いに留まらず、深読みすればきりがなくなるほどの含みを感じさせる脚本が秀逸。そして観終わった後の、心地よい疲労感と胸を締め付けられる切なさに思わず涙が流れる。ヒーローとしての一線を越えて尚、正義を貫くバットマンは、アメコミヒーローの次元を超えて神に近づく。
CGを極力廃した生々しいアクションとそのバックに流れる荘厳な音楽、そして練りこまれた抜群の脚本とヒース・レジャーの魂の融合により、作品は傑作へと昇華する。これはとんでもない作品ができたものだと言わずにはいられない。返す返す劇場に行くのをスルーしてしまったことを後悔してしまう、・・・無念!