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『アパートの鍵貸します』
【感想】 ★★★★★ H17.8.27
 都会派コメディの名匠ビリー・ワイルダーが、サラリーマンの悲哀と恋をユーモアたっぷりに描いて、1960年のアカデミー賞において、作品賞・監督賞など併せて5部門を受賞した傑作コメディ『アパートの鍵貸します』を観る。

 大手保険会社に勤めるサラリーマン、バド(ジャック・レモン)は上役への点数稼ぎで、自室のアパートを4人の上司たちの逢引きの場所として提供していた。その間自室にも戻れないため残業をしたり、時には時間を越えて部屋に居座られたり、急に押しかけられたりと苦労が絶えなかったが、出世のために今日もせっせと日にちと時間を調整していた。そんな時、新しく部屋を提供することになった人事部長の愛人が、バド自身が想いを寄せていた、会社のエレベーター・ガールのフラン(シャーリー・マクレーン)だと気づく。思惑通り昇進するバドの心はにわかに騒ぎ出した・・・。

 「お熱いのがお好き」に続きワイルダー作品に主演したジャック・レモンは、三枚目コメディアンとしてその名人芸を軽妙に披露する。その姿は時にユーモラスであり、周りから振り回される姿は哀れであり、ジャック・レモンはその都度最高の表情をみせる。ワイルダー監督にとっても人生の機微を絶妙に演じるジャック・レモンという俳優は、自身の作品にとって最高の俳優ではなかっただろうか。そして、今回そのジャック・レモンと素晴しい掛け合いをみせる、シャーリー・マクレーンがさらに必見なのだ。彼女を最初に観た映画は「愛と追憶の日々」だったので、さかのぼること23年、当時20代の彼女のあまりの可愛らしさに驚いてしまった(笑)。上目遣いのそのコケティッシュな表情は絶品で、だれもが映画の登場人物と同様に心を奪われてしまう。若い頃から凄い女優さんだったんですね。

多かれ少なかれ周りから振り回される人生、自分らしく生きることは優しいようで難しい。劇中でバドの隣の部屋に住む医者が言う、「メンチュになれ、大人になれ」は、同じく社会人の私にとって心に重く響いた。


そしてちょっと不思議に思ったのが、このアカデミー賞の作品賞を受賞した本作で、最高の演技をみせたこの二人が、その年の第33回のアカデミー賞で当然主演男優賞も主演女優賞も受賞しているはずなのに、ノミネートはされたけど受賞は逃していること。調べてみたら主演男優賞には「エルマー・ガントリー」でバート・ランカスター、主演女優賞には「バターフィールド8」でエリザベス・テイラーがそれぞれ受賞していた。どちらもビッグネームだが、なんと私はどちらの作品も観てなかった・・・っく〜、なんたること!これはさっそく観ねばなるまい!!