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『お熱いのがお好き』
【感想】 ★★★★★ H17.8.14

お熱いのがお好き コメディの名手ビリー・ワイルダーが『七年目の浮気』に続いて再びマリリン・モンローを起用し、堂々アカデミー賞6部門にノミネートされた傑作コメディ『お熱いのがお好き』を観る。とにかくマリリン・モンローがキュートで、改めてビリー・ワイルダーのその女優の持つ魅力を最大限に引き出す手腕に感心する。
ビリー・ワイルダが彼女の魅力について、「他の何人かのグラマーと違って、彼女のセックスアピールは、声とか、身のこなしの優雅さとか、その他彼女のすべての個性から湧き出してくる。彼女クラスの女優といえば、グレタ・ガルポ、ベティ・デヴィス、イングリット・バーグマン・・・、その他ほんの二、三人しか挙げることができない」と語っている。まさしく絶賛なのだ。


 禁酒法時代のシカゴ。そんな中秘密裏に営業される酒場でミュージシャンとして演奏するジョー(トニー・カーチス)とジェリー(ジャック・レモン)。偶然ギャング同士の抗争の場に居合わせ、殺人を目撃してしまったことから一味に追われる羽目に。二人は脱出のために、マイアミ行きの女性だけのジャズバンドに女装してもぐりこむ。そしてバンドの歌手シュガー(マリリン・モンロー)に出逢い、ジェリーはすぐに一目惚れしてしまい、やがてジョーも彼女への想いを募らせていく・・・。

 とにかくカーチスとレモンの女装っぷりがいい!体も大きいしどう見ても男なんだけど、そんなことはお構いなしに女になりきってる(笑)。特にレモンの女っぷりは抱腹絶倒で、「俺は女だ」と唱える様や、喋りの合間に鼻は鳴るわ、気持ち悪い笑い方に、自然にバンドの女性たちの輪に入っていく調子のよさといったらないのだ。必見はビーチでモンローと一緒に女走りで走ってくるレモン(爆)。いや〜、もう最高!そんな芸達者な二人の役者に、モンローも加わり、そこへテンポよく交わされる粋なセリフと、どれをとっても素晴しいコメディなのだ。

この撮影当時モンローはかなりの情調不安定の時だったらしく、遅刻はするは、来てもこもったきり出てこないとか、出演者たちはモンローが来るまで何時間も待たされたらしいです。最初の汽車の中でマンドリンを片手に歌うシーンは、出演者の別の女性に監督がわざと歌わせ、それを聞いてモンローが出てきたとか、とにかく撮影が大変だったようですね。それでもこの作品を観てると、出演者がみんな撮影を楽しんでいるような雰囲気がしてきます。

ビリー・ワイルダーが手掛けるコメディは、最近のコメディと違ってなによりスマートです。モンローファンならずとも、コメディ好きならぜひこんな洒落たコメディも観て欲しいですね。