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『スリーピー・ホロウ』
【感想】 ★★★☆ H18.8.19

 「マーズ・アタック」から3年、鬼才ティム・バートンが、ワシントン・アーヴィングの古典「スリーピー・ホロウの伝説」を、いまやバートン作品にはなくてはならないジョニー・デップを主演に映画化した、ゴシップ・ホラー『スリーピー・ホロウ』を観る。「シザー・ハンズ」以降ティム・バートの世界に、デップほどマッチした俳優はいない。本作もデップ以外には考えられないほどのはまり役で、バートンワールドを一緒に奏でる。

 1799年のアメリカ、ニューヨーク市警の捜査官イカボット(ジョニー・デップ)は、いまだに拷問による自白に頼る犯人逮捕に、科学捜査の導入を説くが受け入れられず、代わりに市長からある事件の捜査を命じられる。その事件は、郊外にある寒村スリーピー・ホロウで起こった連続殺人事件で、被害者はすべて首を切断されるという異常なものだった。そして村へやって来たイカボットを待ち受けていたものは、南北戦争で殺戮の限りを尽くした伝説の“首なし騎士”の亡霊だった。

 ほとんどモノトーンといえるほどのダークな色彩に、まるで影絵のようなうねった大木や風車のシルエットなど、薄気味悪さとファンタジックが入り混じった風景が、いかにもバートンらしく、改めてこの監督の映像センスの素晴らしさを感じる。ホラーもバートンの手にかかれば、幻想的なファンタジーへと一変してしまうんだよね。このバートンの世界観を感じられることに見る喜びがあり、この時点でかなりの満足感を味わえるのだ^^
そして顔色の悪いジョニー・デップの、ホラー映画にありえないユーモラスでいて、とらえどころのない不思議系の捜査官と、クラシカルなムードを漂わせるクリスティーナ・リッチの神秘的な美しさが、バートンワールドにピタリとはまる。思いのほかびびるシーンはないが、ところどころで入るイカボットが見る悪夢がなにより怖い。「シャイニング」を思わせるあの拷問の棺から飛び出す血しぶきのシーンには、はいっ参りました(笑)。ホラー作品としては物足りないが、それでも程よいサスペンス仕立てと、意外とみせる首なし騎士とのアクションシーンなど、なかなかよく出来た作品だった。ただ、ザックザックとこれでもかと首をはねる、バートンのサディスティックさもろのシーンの連続には、ちょっと辟易してしまった。

そしてここがミソなんだけど、観終わった後には、あんなに首を切りまくった首なし騎士に、まあクリストファー・ウォーケンが演じていたからではないと思うが、同情するというか彼を操った人間のほうが悪くて、かえって人間の方がはるかに怖いという感覚にさせられる。ここら辺のブラックなところが、怪物を愛してやまないバートンならではってとこなんだろうなあ。

そして最後に思う。この頃のジョニー・デップから、誰がキャプテン・ジャック・スパロウを想像しただろうか(笑)