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『シン・シティ』
【感想】 ★★★☆ H18.6.25

シン・シティ グラフィック・ノベル界の異才、フランク・ミラー原作のアメコミ「シン・シティ」の世界を忠実に描き出し、そのあまりにも刺激的な映像で全米No.1の大ヒットとなった『シン・シティ』を観る。予告編を観ただけで、今までに例を見ないとんでもない映画が現れたと直感する。おまけに出演依頼が殺到したというだけあって、出演者の豪華なこと。もう迷うことなく映像特典満載のプレミアム・エディション版のDVDを購入。

 酒に女、そして暴力が渦巻く混沌の街シン・シティ。シン・シティ"最後の正義”といわれた刑事ハーティガンは引退の日に少女を誘拐した異常犯を追っていた。持病の心臓の痛みに耐えながらなんとか少女を救出し、犯人を追い詰めるが、相棒のボブの裏切りにあい、背中から撃たれてしまう。しかも少女誘拐犯に仕立て上げられ、投獄されることに・・・。

 原作のコミックは見たことないが、日本の漫画と違うアメコミ独特の黒を基調とした世界を忠実に再現しているのだろう。モノクロとパートカラーで描かれるスタイリッシュな映像に、全編にわたって漂うハードボイルドの香り。オープニングの屋上に現れる赤いドレスを着た女性のシーンから、その革新的なコミックの世界に魅せられる。光と影が絶妙に組み合わされるカットの何処を切り取っても、飾れるくらいの完成された構図。原作のシーンそのままなんだろう。
ストーリーは女たちに注ぐ愛のために闘う男たちの話を、オムニバス3話で構成されている。中でも愛した女を殺されて復讐を誓い、手段を選ばず野獣のように暴れまわるマーヴ(ミッキー・ローク)の、最初のエピソードがいい。というか、このエピソードでなぜかお腹いっぱいになってしまい、後はほとんど惰性で観ている感覚だった。あまりにも刺激的な映像が続いたせいか、エピソードが変わってもやってることはあまり代わり映えしなかったからなのか。はっきり判ることは、エンディングに向かって盛り上がっていくものがほとんどなかったということ。ひたすらグロテスクなバイオレンス描写が、次から次へと繰り返されるだけ。惜しい・・・。これだけの世界を創り出して、ストーリーが薄っぺら過ぎる。それぞれのキャラクターが秀逸だっただけに惜しい・・・。

ジェシカ・アルバのダンスシーンばかりがいたるところで露出されてるが、私の一番のお気に入りのシーンは、デル・トロが便器の中に顔を突っ込まれるシーン(笑)。他にタランティーノがそこだけ監督したという、デル・トロとクライヴ・オーウェンのドライブシーンなど、本作のデル・トロはかなりおいしい役だったね。あと意外な気色悪さを発揮したイライジャ・ウッドや、五右衛門のように刀でズバズバと斬りまくるミホ(デボン青木)もいけてる。ほんと、キャラクターたちはどれも作り込まれてて、良かったんだけどなあ。

あと、DVDの特典映像がいつになく良かった。なかでもCG背景を合成する前の、オリジナルのカラー映像が早送りだけど、フルで収録されている。グリーン・スクリーンだけのスタジオの中で、なんとも間抜けな感じだが、気のせいか色づくだけで女優陣はさらに美しくなり、俳優たちは生き生きと息づいていたように見えた。自分の中で、なぜかこういう映画は否定しないといけないみたいな感覚があり、この映画に関しては公平な評価が出来なかったように思う。なにより評価がはっきり分かれる映画だったんじゃないかなあ。

なお、既に'07年に「シン・シティ2」、'08年に3が公開予定となっている。