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『サイン』
【感想】 ★★★☆ H18.8.21

 マイケル・ナイト・シャマラン監督の長編第3作『サイン』を観る。長編初監督作品「シックス・センス」で一躍注目の監督になり、その独特のサスペンス・スリラー作品は次回作がもっとも期待される監督となった。また、シャマラン作品は自身の独創的な脚本もさることながら、非常に予告編が上手く、もう観ずに入られなくなるんだよねえ。ちなみに私はシャマランをシャラマンとよく間違える、レビューとは関係ないけど^^;

 ある朝グラハム(メル・ギブソン)が目を覚ますと、遠くで娘ボーの叫び声が聞こえる。慌てて家を飛び出したグラハムは、同じく異変を感じて飛び出してきた弟メリル(ホアキン・フェニックス)と共に、一面のとうもろこし畑を掻き分けて駆けつける。畑にたたずんでいたボーを抱きかかえて、息子モーガンに声をかけると、モーガンは「神様がやった」と答え、父親の顔をある方向へ向ける。グラハムは畑の中に広がる巨大なミステリー・サークルを見て立ちすくしてしまう。そしてその日から飼い犬が急に凶暴になったり、次々と奇妙な現象が起こり、グラハムは次第に家の周りに潜む“何か”の存在を感じていく。

 ミステリー・サークルから始まる、シャマランお得意の思わせぶりぶり演出にもう釘付け。サブリミナルのように所々で挿入されるショッキングなシーンがいい。あの有名なヒマラヤの雪男を思わせる、ホームビデオのシーンは、あまりのリアリティさにホアキンと一緒に声を上げてしまった(笑)。また、全編を通して感じる息詰まる閉塞感が凄い。途中で街に出掛けるシーンがあるんだけど、屋外という開放感がまったくないんだよね。よく見るとこの外食してるシーンで、ドアの枠がフレームのようにぎゅっと四人を囲んでる。それ以外はすべて農場にある一軒家が舞台で、家の中でも4人が寄り添っていたり、窓やドアの枠越しのショットなど、常に閉塞感を煽っている。それはまさしくヒッチコックの「鳥」で感じた閉塞感であり、シャマランがヒッチコックをかなり意識していたのがわかる。本人がちょこっと出演してるところも一緒だしね(笑)。ヒッチコックと違ってかなり重要な役だったりするけど^^;
それから賛否両論のラストは、・・・まあいいじゃないの^^;。そこまでに辿り着くまでが見せ場だから・・・。

そんなシャマラン作品にはある特徴がある。その俳優のもつ個性とか特徴を消してしまうというか、ほんとにメル・ギブソンなの?と思わせるぐらい、メルの覇気のない演技(そういう設定の役ではあったけど)に驚く。これは「ヴィレッジ」のレビューでも書いたが、大スターや名優が出演しても、そのスターのオーラがすべて消してしまうのだ。登場人物たちがすべて何かぎこちないというか、リアリティに欠ける演技が不自然に感じてしまう。まあその不自然さが観る者の不安を煽り、他の作品と一線を画すシャマラン作品の不思議な魅力となっているんだと思うんだけど、なんかもったいない・・・。今回このDVDの特典映像を観て、その理由がなんとなくわかった様な気がした。それはこのシャマランという監督は、自分のイメージ通りになるまで、俳優に細かく演技指導を行い、少しも妥協しないんだよね。そこら辺に俳優たちがナチュラルに演技できない理由があるんじゃないかと、私は偉そうにそう思った(笑)。またシャマランは演技以外に、音楽に対しても注文をつけてて、メイキングで作曲者に「あと5%の愛が欲しい」と注文を出してた(爆)。

この秋に待望の新作「レディ・イン・ザ・ウォータ」が公開されるが、相変わらず見る者の想像を掻き立てる予告編がいいんだよなあ^^