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『さや侍』
【感想】 ★★★☆ H24.8.16
 ダウンタウン松本人志の劇場第3弾監督作品『さや侍』を観る。以前期待していた初監督作「大日本人」の出来が、あまりにもシュールすぎてがっかりし、2作目の「しんぼる」は観てもないんだけど、本作は偶然ひかりテレビで発見したので、録画して観ることに。もちろんあんまり期待せずに(^^;)

 ある出来事がきっかけで刀を捨ててしまった侍野見勘十郎。今では無断で脱藩したことから、娘と二人で追手から逃れる逃亡生活を送っていた。賞金目当てで次々と襲い掛かってくる賞金稼ぎ達。傷つきながらもなんとか逃亡を続けてきたが、ある晩寺で休んでいるところをついに役人たちに捕まってしまう。ただこの国の変わり者の殿様により、「30日の業」という刑を申し渡される。それは母を失った悲しみから笑えなくなった若君を、毎日一回だけ芸をして、一回でも笑わすことができたら無罪放免、できなければ切腹というものだった。

 この映画が公開されている時に、TVの番宣で現れた主役の野見隆明を見る機会があったんだけど、そのあまりのとんでもキャラクターぶりに、今回も絶対変な映画になってるんじゃないかと心配していた(笑)。でも、実際に観てみるとそんな予想を裏切り、意外にもとても見やすい作品になっていた。。
とにかく監督が惚れ込んだであろう、全くの素人にして主役の野見隆明の個性的な顔の表情と、醸し出す変なおっさんオーラが、尋常ではない強烈な可笑しみをまき散らす。竹くまでを三味線にして、「ベンベン」と言いながら一心不乱に弾き鳴らす姿は、もはや神がかり的で、私は腹が痛くなるほど笑ってしまった。TVで松本人志が、撮影中野見隆明に対してはわざとみんなが冷たくし、一発芸のシーンでも一切誰も笑わず、どんどん追い込んでいった、なんてエピソード語っていた。この至る所で醸し出される、気まず〜い空気感はそこから生まれたんだろうねえ。見ている間ずっと感じ続けるむず痒い感は、いつしか癖になり、自分でもなんだかわからない笑いを誘う。
ただあまりのくだらなさに、あの姿から失笑以外何も感じない人もいるということも予想される。繰り返されるくらだない一発芸は、はまらない人にはただの苦痛であり、その辺の笑いのツボが観る人を選ぶ作品だろうね。かくいう「ガキの使い」が大好きな私も、このままずっとこの一発芸が永遠と繰り返されるんじゃ、これはきついな〜と思ったほど。まあさすがに最後まで、この微妙な一発芸が繰り返されることはなく、その先にはまさかの驚きと感動、そして涙が待っていた。へえ〜、そう来ましたか、さすが!このくだらないシーンはこのための前ふりだったんだなあ〜、なんて感心する切ないラストだった。
他の方のレビューを読むと、結局賛否両論ということだったけど、私は面白くて次の日も続けて観てしまった。なんか好きだなあ(^^)
それから発売されているDVDの特典に、8つの「未公開の業」が収録されているとのこと。まあカットされたくらいだから、たぶんそれなりの出来だと思うけど、メイキングと合わせて、いつか見てみたいかも・・・(^^;)