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『ルビー・スパークス』
【感想】 ★★★☆ H26.9.1
“人が出会い、恋におちるだけでそれはすでに、ミラクル”
 私の大好きなロード・ムービー「リトル・ミス・サンシャイン」の、ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファレス監督の最新作『ルビー・スパークス』を観る。気になっていた作品ではあったんだけど、このパステル調のジャケットを見るたびに気分がそがれてしまい、しばらくほっておくことに。直感で、なんだかさえない中年のおじさんと若い女性の、イタいラブストーリーをイメージしちゃいました。それでもまあブルーレイの廉価版が出たのでとりあえず観てみることに。

 デビュー作がベストセラーとなり、天才作家としてもてはやされたカルヴィンだったが、その後はそのプレッシャーからスランプに陥り、新作が書けずにいた。恋人にも逃げられ、今ではカウンセラーを受ける日々だった。そんなある日、カルヴィンは夢で現れた美しい女性に恋をしてしまう。目が覚めても恋心は消えず、久しぶりに湧いてきた創作意欲に、タイプライターを打つ手が止まらない。数日後、ベッドから出たカルヴィンに、キッチンから声をかける女性が・・・。

 冒頭からまず思ったことは、夢に現れた女性が現実に現れるという、なんという男の妄想を爆発させた映画なんだろうだった。しかも自分が書いた小説通りの設定に変えられる女性という、何とも都合のいいこんな一方的な展開が許されるのだろうかと心配になる。ただ無条件でラブラブだった二人の間にも、自我に目覚め始めたルビーによって、微妙な状態に。このあたりからファンタジーなんだけど、なんだか妙に生々しい、心に刺さっていたとげを触られるような現実的な痛みを味わわされるという、酸っぱい展開に変わっていく。
とにかく想像上の彼女だから、ラストはどういうことになるんだろうかという、予測不能な(まあそうはいっても最後はいい感じになるんだろうなとは思っているが)ストーリーと、ルビーを演じるゾーイ・カザンのキュートさに、最後まで不思議なときめきを感じながら見ることができた。ゾーイ・カザン注目だね、なんて思いながら、そういえばなんだかズーイ・デシャネルに感じが似てるな〜、って思ったら、この作品のスタッフが、「500日のサマー」と同じスタッフだった。ゾーイにズーイって名前まで似ちゃってることは置いといて、基本こういう彼女がいたらいいな〜的なツボが両方まんま同じだっていう設定に、ちょっとこのスタッフたちのいやらしさを感じる。それにだいたいこの主人公のカルヴィンに全く魅力がないってところは、女性側ばかりに力を入れて、男性目線最優先過ぎなんだなあ。だからラストもあんな感じになっちゃいました、ってねえ。
それと後から知ったんだけど、この主演の二人、プライベートでも恋人だとのこと。こういうのを知らなくていい情報っていうやつだよねえ。さらにアントニオ・バンデラスにアネット・ベニングが出演しているのも後から知ったんだけど、映画通としては気が付かなかった自分にへこんでしまう。なにげにキャスティング凄かったんだね。

久しぶりに見るラブコメだったけど、そこで味わううれしはずかしのこの感情は、なんだかやっぱりいいんだなあ。