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『レッドクリフ PartU −未来への最終決戦−』
【感想】 ★★★☆ H21.4.30
レッドクリフ PartU アジア映画史上最高の製作費100億円が投じられた、三国志史上もっとも有名な赤壁の戦いを描いた前作「レッドクリフ PartT」に続く、完結編『レッドクリフ PartU/未来への最終決戦』を観る。三国志については吉川英治の「三国志」やTVゲームでかなり愛着があり、つい先日「PartT」のTV放送を見て、意外に面白く見れたことから、続きはぜひ大画面で見ようと劇場にて観賞。

 河を挟み対岸にそれぞれ布陣する曹操軍80万と孫権・劉備の連合軍5万。緒戦を「九官八卦の陣」で勝利した孫権・劉備の陣営に、疫病で死んだ曹操軍の兵士達を積んだ船が流れてくる。曹操の思惑通り陣営に疫病は広がり、やがて劉備は自軍の兵士達を想い、決戦を前に撤退してしまう・・・。

 曹操のカリスマ性、孔明の知略の鮮やかさ、超雲・関羽・張飛たち豪傑のパワー、そして劉備の情けなさと三国志好きも納得の世界が、見事に実写で描かれている。さらに吉川英治の「三国志」を読破したものにとっては、三国志をあまり知らない人より、より楽しめるという自己満足に浸れるところが嬉しい(笑)
とにかくこれでもかと投入される、人と馬と炎の大物量攻撃にただただ感心し、その大迫力に目が釘付けになってしまった。特にあの日本の合戦には無い、盾を縦横に張り巡らして進む陣形と、その中から関羽が飛び出し戦うシーンのカッコいいこと。スケールが大きすぎて、何がなんだか分からなくなってもおかしくないところで、それぞれのキャラクターの活躍が洩れなく、見事に映し出されていた。まあ執拗に現れる白い鳩はご愛嬌ということで(^^;)

目が釘付けになったといったら、周喩の妻小喬を演じたリン・チーリンの美しさ。そもそも曹操がこの小喬に惚れてしまった事が戦いの一端となっているが、この小喬、いやリン・チーリンに「惚れてまうやろ!」とほんとに惚れてしまったのはジョン・ウーだったんでしょうね。あのこれでもかと彼女のどアップにこだわり、一人敵陣に乗り込むなんてエピソードまで加えて。対してこの監督の期待にこたえようとするリン・チーリン嬢だったけど、やはり演技経験の無い悲しさか、カメラの前で「ハイ、チーズ」と同じ微笑と流し目で代わり映えしない表情。そしてあの子供のような高い声も、なにか一人浮いていた感はぬぐえない。でも近来稀に見る美貌であることは確か。今後の彼女の活躍が楽しみですね。

ただラストの孔明はいただけなかった。あの地獄のような戦場から離れ、一人涼しい顔のこの男はなんなんだ。そもそも孫権に同盟を持ちかけたことから始まり、冷静に実行される大殺戮の計に、弓を連射させる新兵器など、兵士達を死に追いやりながら自らの手はまったく汚さないというポジション。戦場に消えていった名も無き兵士達の魂のことを思えばこそ、ラストの孔明と周喩の間でにこやかに交わされる「次は戦場で」みたいなシーンは、私の中ではなかったですね。悲しみの中で兵士達の死を悼み、友の死を悼む、そして破壊から再生へ、そんなシーンがあればなと思った。孔明には戦いの終わったあの戦場の中心に赴き、そして涙して欲しかった。こういう映画では戦いの虚しさが描かれるものだけど、あれだけの死体の山を築いた戦場から立ち去る英雄達に、感傷的な姿はほとんどなかった。死体の山をただの背景にしてしまったジョン・ウーの、情感のまったくない演出にただただ落胆する。

しかし赤壁の戦いがこれだけ大ヒットしたんだから、そのうち関が原の戦いを映画化しようとする輩が現れるのではと期待しているんだけどなあ。