サブリナの休日トップページドラマ2/ドラマ1

『リアル・スティール』
【感想】 ★★★ H24.5.26
 格闘技ロボットとの戦いを通じて親子の再生を描いた、ヒュー・ジャックマン主演の感動ドラマ『リアル・スティール』を観る。公開時はさほど話題にならなかったと記憶するが、泣ける・感動するなんてレビューをたくさん読み観ることに。

 近未来、ボクシングの世界はより激しい刺激を求める観客の欲望により、人間から格闘技ロボットによる試合へと変わっていた。元プロボクサーだったチャーリーは、格闘技ロボットを使いあらゆる場所で試合を行っていたが、上手くいかず借金に追われる日々を送っていた。そんなある日、チャーリーの下に突然、別れた妻が亡くなり、その一人息子の親権についての手続きを求める弁護士が現れる・・・。

 もう映画を観る前から離れ離れになっていた父親と息子が、格闘技ロボットとの戦いを続けていくうちに、次第に親子の絆を深めていき、最後は大泣き必至の感動ドラマが繰り広げられる、なんて予想をしていたが、ズバリその通りの、ある意味王道を行く作品だった。全く違和感なく実写の中に存在するCGロボットの、迫力あるバトルシーンに、ダメおやじが少しずつ父性愛に目覚めていく姿、そして打ち捨てられていたスパーリング用ロボットが勝ち上がっていく姿を、自らと重ねながら再生していく様は、ラストでしっかりと涙を流させてくれた。なによりこの一緒に戦うロボットの名前がアトムってのが泣かせるじゃないか。

ただこの映画やたらと描写不足なんだよねえ。マックスはどうしてプロの技師よりロボットに精通しているのかとか、いろいろと突っ込みどころがあるんだけど、何が一番足りないかというと、人の痛み。それは体の痛みであったり、心の痛みであったりする。ボクシングをロボットにやらせているので当然体の痛みはない。チャーリーとロボットが肉体的にシンクロしていないっていうところで、何度もロボットが立ち上がっても空々しい。そして決定的に足りないのが、愛するものを失った悲しみ。この親子の妻そして母を失った悲しみが全くエピソードとして描かれていないっていうのはなんなんだろう。結局最後まで母親の回想シーンもなく、写真すら出てこないという不思議。父と子の再生の物語だと思っていたんだけど、なんとも都合のよい親子愛であり、CGのロボットを使って何気にエンターテイメントさせているだけという感じで、もうちょっとドラマに厚みがほしかったな。

そんな私にとっては足りないものだらけの内容だったんだけど、ブルーレイの特典に入っている未公開シーンを見てびっくり。その足りないものに関するシーンがことごとく入っていた。中でも2人が亡くなった母親を一緒に想うシーンなんか、どうしてカットされたんだろう。未公開シーンの冒頭で、監督が作品のトーンがファミリー映画寄りにならないように編集したというコメントがあった。過去を振り返ってジメジメするような作品にならないよう、あえてカットし、もう一つのテーマでもある、決してあきらめないこと、そして立ち向かうってことを前面に出し、あくまでも爽やかなトーンにしたかったのかな。ただ本作は、そんなスカッとするところが大いに受けた作品ではある。それにしたも、カットするにはもったいないシーンだったなあ。個人的には絶対入れて、もっとドラマチックな作品にしてほしかった・・・、かな(^^)