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『プリシラ』
【感想】 ★★★★ H19.4.1
プリシラ
 三人のゲイ達が、広大なオーストラリアの大地を、バスに乗って旅をするロード・ムービーの大ヒット作『プリシラ』を観る。目もくらむような原色のきらびやかな衣装は、第67回アカデミー賞の衣装デザイン賞を受賞しているが、この年の映画賞の主役は「フォレスト・ガンプ/一期一会」であり「パルプ・フィクション」であり、そんな影にこんな素敵な作品が隠れていたなんて・・・。実は私もかなり前から目はつけていたんだけど、このジャケットの写真が意味不明で、何の映画なのかさっぱり分からなかったので、なかなか観れなかった(笑)。でもこのジャケット写真に惑わされずに、ぜひたくさんの人に見てほしい作品です。

 シドニーのクラブで、今夜も女装し音楽にあわせて口パクで歌い踊るゲイのミッチ(ヒューゴ・ウィーヴィング)のもとに、一本の電話が入る。周りの仲間には内緒だったが、ミッチには昔分かれた妻がいて、電話はその妻からオーストラリア中部にあるアリス・スウリングスのホテルでのステージの依頼だった。ミッチはすぐに恋人を亡くしたばかりで沈んでいた友達のバーナデット(テレンス・スタンプ)と、若くて騒々しいが底抜けに明るいフェリシア(ガイ・ピアース)を誘う。三人はフェリシアが母親に泣きついて手に入れたバス「プリシラ号」に乗り込み、地平線の果てを目指して走り出した。

 もうこの映画を私は何回見たんだろう?見るたびにこの三人のゲイたちが愛おしくなる。可笑しくて楽しくて、そして時には切なくて、とっても素敵な映画なのだ。
三人のドラッッグ・クイーン(女装のゲイ)が主役ということで、いったいどんな映画なんだろうかと不安だったところの、オープニングで色物丸出しのオカマルックで登場のヒューゴ・ウィーヴィングだったので、思わずやっちゃったか?だったけど、70年代の懐かしいディスコ・サウンドに乗せて、色鮮やかなド派手衣装で踊る三人の姿に、気分はもうノリノリ^^。
主人公のミッチを演じるヒューゴ・ウィーヴィングは、いまや引っ張りだこのご存知“エージェント・スミス”であり、「メメント」や「L.A.コンフィデンシャル」のガイ・ピースに名優テレンス・スタンプと、女装の姿がまったくイメージできなかっただろう意外なキャスティングが光る。そしてこの三人の意外な魅力を見抜いた監督のキャスティングに、最高のパフォーマンスで応える三人。なかでもテレンス・スタンプの、一挙手一投足にこめられるエレガントさは絶品だった。どうしたらあんな風に走れるんだ(笑)。そしてテレンス・スタンプの凄さは、踊りについても見逃せない。いきなりおじいさんの表情に変わるや、切れもなく他の二人から一拍遅れて、あくまでもマイペースで優雅に踊り続ける姿のなんと可愛らしいことか。まさしくそこには身も心も女性になりきった姿があった。

旅先で三人のゲイたちに、偏見や差別で浴びせられる罵声や暴力。それでも迷いながらも本当の自分を探し続ける彼女たちの前では、価値観の違いなんて何の意味も持たない。これが本当の自分、人にどんなに言われようと自分らしく生きたい!。広大なオーストラリアの赤い大地と、澄み渡る青空はどこまでも明るく、自分に正直に強く生きようとする三人の姿は何よりも眩しく、まさしく砂漠に咲く一輪の花のように健気で美しかった。
人生を重ねるごとに、本当の自分が次第に薄れていくように感じる日々。私も自分らしく自分の人生をまっとうしたい。そんな忘れかけていたものを、また思い出させてくれた映画だった。
エンディングに最高の気分で聞くアバの「マンマ・ミーア」が、見終わった後もいつまでも頭の中で流れ続けている・・・。