サブリナの休日トップページ邦画

『パコと魔法の絵本』
【感想】 ★★★★ H22.12.11
 「嫌われ松子の一生」「下妻物語」の中島哲也監督のファンタジー作品『パコと魔法の絵本』を観る。いろんなところで高い評価だったこの作品、ずっと気になってたんだけど、予告編があまりにもハチャメチャだったためずっとスルーしていた。でも「下妻物語」もそうだったように、見たら面白いかもっていう予感がして見ることに(^^)

 これは風変わりなお医者さんや看護婦に、患者達もへんてこりんというある病院で、一人の少女に起こった奇跡を綴った素敵なお話。若い時から一代で会社を興し、ひたすら突っ走ってきた大貫(役所広司)も、老いには勝てず体調を崩し今は病院の中。「お前が私を知っているというだけで腹が立つ」が口癖で、誰彼かまわずに当り散らすこのわがままな老人は、みんなの嫌われ者。そんなある日、大貫はパコ(アヤカ・ウィルソン)という少女に出会う・・・。

 いきなりコスプレで着飾った役所広司をはじめ、妻夫木聡に土屋アンナなど豪華俳優陣たちによる、ハイテンションで繰り広げられるセリフの応酬。ただ騒々しいだけのこのオープニングを見て、完璧に失敗したと思った(^^;)ただ見ている者の戸惑いなどお構いなしに、まるで演技合戦をしているかのように、歌い踊りそして激しくぶつかり合う俳優達の姿があまりにも熱く、普段見られない顔も垣間見えて、次第に引き込まれていく。その独特の鮮やかな色彩で彩られる映像と、一見幼稚なストーリーなんだけど、大人心をくすぐる人生の機微とユーモアで見せる、中島監督のファンタジーワールドに、気が付けばどっぷりとはまっていた。あれ?この感じ・・・、そうだ!ティム・バートンの世界だよ。
絵本という言葉の懐かしい響きのように、それぞれが自分に素直に、忘れていたピュアな心を開放していく様は、気恥ずかしくも心地よく、直球ど真ん中で投げ込んでくる泣きの演出も、素直に受け入れて涙・涙。まあここら辺のあざとさとか、一歩間違えば悪ふざけにしか見えない俳優達の熱演とか、評価の分かれるところだけど、私は安部サダヲのあのクッサイ怪演にまで、不思議と嫌悪感を抱くこともなく、物語の一部として受け入れることができた。あのシーンだけ見たら最後まで見ようなんて絶対にありえないことなんだけど、途中もまったく飽くことなく、素晴らしい映像センスと演出で一気に見せてくれた、中島監督の手腕が光る。最新作の「告白」も評判良く、この監督しばらく注目ですねえ。まあそれより未だに「嫌われ松子の一生」は、なんかストーリーがあまりにも悲惨なので見てないんだけど、これも食わず嫌いなのかなあ・・・。

オープニングのまるで長回しで撮っているかのように、途切れることなく長台詞をテンポ良く掛け合う姿から、すぐに舞台を見てるみたいだなあ、なんて思ったら実際に「MIDSUMMER CAROL ガマ王子vsザリガニ魔人」という、知る人ぞ知る有名な舞台の映画化だったことが、後で調べてみて判明。なるほど〜、あの大げさな衣装にメイクと、素自然なハイテンションぶり、納得です。貫地谷しほりがどの場面に出てたのかを含め、見終わった後すぐにもう一回見たくなる、そんな素敵な作品でした。