サブリナの休日トップページモンスター

『パシフィック・リム』
【感想】 ★★★☆ H25.8.9
“人類最後の望みは、この巨兵。”
 「パンズ・ラビリンス」や「ヘル・ボーイ」で、他と一線を隔すイマジネーション溢れるビジュアルワールドを見せてくれたギレルモ・デル・トロ監督の最新作『パシフィック・リム』を劇場にて鑑賞。特撮映画ファンとして、早くから目をつけていた作品だったので、やっぱり公開初日に出動してしまった。

 西暦2013年8月10日。太平洋の深海に開いた裂け目から、突如出現した謎の巨大生物「KAIJUU」により、世界中の都市は瞬く間に破壊されていった。人類の滅亡が間近に迫ったとき、環太平洋沿岸(パシフィック・リム)諸国は一つに団結し、人型巨大兵器ロボット「イェーガー」を開発。人類の存亡をかけた「KAIJUU」VS「イェーガー」の戦いが今始まる。

 オープニングから出し惜しみなく暴れまくる巨大な怪獣と、巨大ロボットのイェーガーとのガチンコな戦いにいきなりワクワク感がMAXに。ハリウッドが本気で怪獣映画を作ると、こんなにド迫力のバトルが観れるのかと感激する。しかも日本の特撮・アニメオタクを公言するギレルモ・デル・トロ監督の、完璧に日本の特撮映画をインスパイアしたであろう、ただシンプルに殴る・蹴る、そしてブン投げるという、無骨だが重量感あふれるバトルシーンは、思わず体に力が入る程の大迫力だ。そして巨大ロボットが繰り出すパンチは、怪獣の顔にさく裂する拳の感触が伝わってくる程の生々しさで、観る者を熱くさせる。またその怪獣の造形も、CGでありながらわざと人間が中に入っているように見えるデザインにしたというんだから、この監督の日本の特撮映画への愛を感じて、なんだか涙が出そうになっちゃうよ。途中苦戦してるシーンでは、「おいおい、普通マジンガーブレードみたいなのは持ってないとだめでしょ」なんて思った瞬間に出したチェーン・ソードのタイミングの良さや、私が観たのは日本語吹き替え版だったんだけど、バトルシーンの途中で叫んだ主人公の「ロケットパ〜ンチ!」に、もう拍手喝采だった。いやあ〜、かっこいい〜!!

 最高にいけてるバトルシーンに、そこそこのパイロットたちの人間ドラマ。結構無難に作られていたんだけど、ただねえ〜、ワンランク上を行こうと思ったら、やっぱりこれだけじゃあだめなんだなあ。観終ったあとは、ラストバトルの後味の悪さと、やはり特撮映画を見続けてきた、目の肥えた日本人には、この程度では満点は出せない。結局は好みの問題だけど、ダメ出しをさせてもらいたい。まず主人公のキャラクターが優等生過ぎて、ぜんぜんつまんない。仲間がやられているのに、待機命令を守ってじっとしてるなんて信じられない。やはりロボットを操縦する主人公は、兜甲児のように命令を無視して仲間は必死で助けに行くし、もっと泣いたり笑ったりする熱血の主人公でしょうが。さらにロボットのコックピットから見える景色が全くないので、ロボットとコックピットとの一体感がなく、どこか離れた部屋で勝手にガシャガシャやってる感じがして、しらけてしまう。まるで「スタートレック」でいう、エンタープライズ号とコックピットの一体感がなく、どこかセットでやってる感漂う、しらけた雰囲気に似ている。このほとんどロケのシーンのない、セットで撮影してる感が、全編を通してリアル感をなくし、作品を台無しにしている。「トランスフォーマー」のように、真っ青な青空の下でくっきりと見せてくれるシーンを期待していたが、画面が暗いうえに雨は降ってるわ海の中だわで、よく見えないストレスは止めてほしかったなあ。そしてやはりいくら見応えのあるバトルシーンも、あまり変わり映えがしないと飽きてしまう。ラストはやはり特別な力を発揮してほしかったなあ。

それでも日本の特撮ファンの期待を一身に背負って、出ずっぱりで頑張っていた菊池凜子に、素直に拍手を送りたい。やはりこの映画に日本人がキャスティングされたのがなにより嬉しいね。ちなみに、なにかと某子役のハリウッドデビューを、力を入れて宣伝しているけど、そんなことはどうでもいい。菊池凜子のハリウッドでの活躍を、これからも大いに応援したい。頭を空っぽにし、ただ大迫力のバトルシーンを堪能する、そんな作品だった。