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『オブリビオン』
【感想】 ★★★☆ H25.6.12

“人類が去った地球。愛だけが残された。”
 予告編を観ることもなく、トム・クルーズが主演という以外まったくの予備知識なしで、SF大作『オブリビオン』を久しぶりの劇場にて観賞。予告編も見ずまっさらで見る映画が、こんなにドキドキワクワクさせてくれるものなんだと、なんだか映画に対して新鮮な気持ちを味わえた作品だった。

 突然現れたスカヴと呼ばれるエイリアンとの戦いから60年、人類はなんとか戦いに勝利することができたが、地上は月破壊による自然災害や、核兵器などの使用により壊滅。汚染された大地にはもはや人間が生存できる場所はなくなっていた。それでも生き残った人類は、土星の衛星タイタンへの移住を図る。ただ2人、ジャック(トム・クルーズ)とヴィクトリア(アンドレア・ライズブロー)は地上に残り、移住のために必要な物資を、今もなお残っているスカヴから守るため、日々監視とパトロールを行っていた。任務完了まで残り2週間となったある日、無人偵察機ドローンの遭難信号をキャッチする・・・。

 前作「トロン:レガシー」で、画期的な仮想映像空間を見せてくれたジョセフ・コジンスキー監督が、また素晴らしい映像を披露してくれた。謎の宇宙人の侵略による戦いにより、地上からすべてのものが失われ不毛の地へと化した大地の上空を、真っ白なバブルシップが飛行して映し出される映像のなんという美しさ。荘厳な音楽をバックに、どこまでも静けさを讃える広大な大地の鮮明な映像は、ただ見ているだけで心地よい。実際にこの映像はCGではなく、アイスランドの上空を空撮したもので、高解像度のソニーのカメラが活躍したとパンフレットに書いてあったが、こんな神秘的な景色が実際に地球上に存在するということが驚きだった。そしてそのバブルシップのコックピットに、なんの違和感もなくピタリとはまるトム・クルーズの存在感。やっぱカッコイイ。

正体を現さない侵略者に、夢に現れる謎の女性と、物語は次第に困窮を深めサスペンスフルな展開に。予備知識を全く持たずに臨んだため、目まぐるしく推理させてくれる展開が、もどかしくも楽しい。そしてたどりつく驚愕の真実・・・。面白い。素直に面白い。

ただ、真実を知ったジャックの心情を含め、もっともっと登場人物たちの描写を掘り下げて、感情を盛り上げることができたんではないかという不満がかなり残ってしまった。タイトルの“オブリビオン”とは“忘却”。ジャックを突き動かす愛の記憶がキーであるこの展開なら、やはり最後は涙させてほしかった。劇中で象徴的に登場する、アンドリュー・ワイエスの「クリスティーナの世界」が、人間の信念と力強さを強烈に印象づける。
それにしてもどのキャラクターもどこか空々しいんだなあ。どこがどうと詳しく書きたいが、何を書いてもネタバレになってしまうので、そこがまたもどかしい(^^;)一つ言えることは、ジャックのパートナーだった女性ヴィクトリアを、もっと切なく丁寧に描いてほしかったなあ。そしてモーガン・フリーマン、いろんな作品にちょこちょこどこにでも出てくるので最近ではもういいやって感じ。あのキャラクターが一番ペラペラで空々しかったよ。もったいないよ、ほんと。


そしてやっぱりラストは蛇足でしたねえ。DVDの映像特典とかで入ってるもう一つのエンディングって感じで、大抵使われない方だと思うんだけどなあ。エンドロールで流れるスザンヌ・サンドフォーの歌声に酔いしれながらも、やっぱり「いらないよなあ〜」と、心の中でつぶやいていた。