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『ノーカントリー』
【感想】 ★★★☆ H21.2.7

 第80回アカデミー賞の作品賞・監督賞など主要4部門を受賞した、コーエン兄弟の最高傑作といわれた『ノーカントリー 』を観る。「ファーゴ」や「ビッグ・リボウスキ」など大好きなコーエン印の作品。ただ予告編を見て、かなりシリアスだったので、らしくないとは思ったんだけど、なんといってもアカデミー賞ですから、期待は膨らむ膨らむ(^^)

 広大なテキサスの荒野、鹿狩りをしていたルウェリン(ジョシュ・ブローリン)は偶然数台の車と、そこに横たわる幾人もの無残な死体を発見する。警戒しながらも近づいたルウェインは、ひとつの死体のそばに置いてあった、200万ドルという大金が入ったトランクを持ち去る。危険を予感して妻を実家に帰し、自分も自宅を離れるが、現場に乗り捨てた車から正体がばれ、組織から雇われた殺し屋シュガー(ハビエル・バルデム)に命を狙われることになる。一方街の保安官ベル(トミー・リー・ジョーンズ)も、事件の異常性を察知し、シュガーを追い始める・・・。

 まず最初に、これはなかなかレビューが書きにくいよ〜(^^;)
終始作品を包み込む、常に銃を向けられているような張り詰めた空気。まるでピーンって音が聞こえてきそうな程の緊迫感から目が離せない。前半のただ雑貨屋とシュガーが話をしているだけのシーンでさえ、釘付けにしてしまうコーエン兄弟のこだわりの演出が冴える。
誰もが時代の流れが望まない方向に向かっていると分かっていながら、止める事のできない絶望にも似たあきらめを感じている。そしてその変化の中で生み落とされる、まったく理解できないモンスター達が現実の世界に溢れ、いつ巻き込まれるか分からない恐怖は、こんな映画だけのものなのか、なんてことを今書きながら考えてしまった。本作はそんな時代に警鐘を鳴らしているという見方もあるが、私的にはこの作品を見てる間はただただあの緊張感に身を委ねて、決して画面から目をそらすことなく、余計なことも一切考えることなく集中して見させてくれたことが心地よかった。ただ、何にも考えずに見ていたせいで、見終わった後どういう作品だったのかよく分からなくて、ものすごくレビューが書き辛かった(笑)

出演者はトミー・リー・ジョーンズも出ているが、なんといっても殺し屋シュガーを演じるハビエル・バルデムの、ただそこにいるだけで伝わってくるあの何をしでかすか分からない恐怖と、圧倒的な存在感が凄い。解説を読むまで、あの「海を飛ぶ夢」の俳優さんとは気がつかなかったが、よ〜く見るとあの髪型といい笑えるはずなのに、狂気とは違う目に宿るあの普通じゃない光がさすが。彼は最高のキャスティングでしたね。

 コーエン兄弟の作品は、あの個性的なキャラクター達と、そんな人間が必死にじたばたする様をシニカルな笑いで描くところが好きだったというか、期待するところだったんだけど、そういう点では裏切られた作品だった。実のところコーエン兄弟好きといっているけど、「ビッグ・リボウスキ」からこの「ノーカントリー」までの間まったく見てなくて、「オー・ブラザー!」とか「バーバー」とか気になってた作品はあったんだけど、このレビューを書くのにちょっと調べたら、それ以降でも4本もの新作があったのに驚いた。これではコーエン兄弟は語れませんねえ〜。反省!