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『ナルニア国物語 第1章:ライオンと魔女』
【感想】 ★★☆ H18.7.29
ナルニア国物語 第1章:ライオンと魔女 「ハリー・ポッター」「指輪物語」に続くC.S.ルイス原作の英国ファンタジー大作『ナルニア国物語 第1章:ライオンと魔女』を観る。時期的にあの「ロード・オブ・ザ・リング」完結の熱も冷めやらぬ絶好のタイミングで登場し、その壮大なスケールも同等以上を期待させた作品で、世界64カ国で初登場第1位となる。

 第二次世界大戦下の空爆にさらされるイギリスから逃れるため、ペペンジー一家の4人兄妹は田舎へと疎開する。いつしか慣れない屋敷での生活の寂しさを紛らすためにかくれんぼを始める。末娘のルーシーは空き部屋の中にあった大きなタンスの中に隠れることに。タンスの奥へ奥へと進んだルーシーは、いつしか雪に包まれた森の中に立っていた。そこへ偶然現れた上半身が人で下半身がヤギというフォーンのタムナスに、ここがナルニア国だと教えられる。今は白い魔女の支配によって、永遠の氷の世界となっているという・・・。

 全7作という壮大なシリーズの割りに、テンポ良く進んでいくストーリー展開に戸惑う。どうやら全7作だが、一話一話が独立したものらしく、しっかり完結するので続編を待ちわびる辛さからは開放される^^;。脅威のVFXによってまるで本当に生きているようにように、違和感なく動き回る数々のクリーチャーがさすがに凄い。なかでもナルニア国の創造主にして最初の王アスランは、もはや実写のライオンと見分けがつかない最高のクオリティーなのだ。なんでも1コマ完成に10時間も要したシーンもあるらしい。まあそれでも私の一番のお気に入りは、シャアの声で喋るキツネ(笑)。この声優さんが声をあてると、みんな赤い彗星になってしまうんだなあ。

公開された当初からことごとくあの「ロード・オブ・ザ・リング」と比較されてしまった作品だった。ファンタジーの枠を超えて、大人の鑑賞にも十分に応えた「ロード・オブ・ザ・リング」に対して、製作がディズニーということで完璧ジュブナイル作品であった「ナルニア国物語」。直球ど真ん中の勧善懲悪ストーリーはわかり易いがどこか物足りない。やはり次男のエドマンドにはダークサイドに落ちてもらわないと(笑)。なにより恋愛のエピソードがないのがいかん!原作は読んでいないんだけど、この手のファンタジー小説でテーマとなる、主人公たちの成長が描き切れておらず、もはやいてもいなくてもいい主人公たちの存在感のなさはどうなんだろう?この主人公の4人兄妹については突っ込みどころ満載。もはやひとつずつ取り上げるのもわずらわしい(今回はいつになく厳しいのだ)。唯一ルーシー役の女の子(ジョージー・ルーシー)の、近頃の鼻持ちならない子役たちと違うあどけなさが新鮮だった。

また「ロード・・・」のダークな世界と対極をなす明るさ。鮮やかな緑の草原に、真っ青な青空の下で繰り広げられるクライマックスの戦いは、どこかのどかであり、迫力が感じられない。ふと「スター・ウォーズ EP1」の同じくクライマックスの戦闘シーンで感じたもどかしさを思い出す。まあこのあたりは劇場で観ていないとうことが大きな原因かもしれないけど・・・。と同時に、改めて「ロード・オブ・ザ・リング」の作りこまれたダークな世界観の素晴らしさを再認識させられた。

すでに第2章「カスピアン王子のつのぶえ」は2008年夏に公開予定となっており、子役4人と監督は続投予定らしい。第一作目から失速してしまった感はぬぐえないが、この続編で大バケすることを期待しよう。