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『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』
【感想】 ★★★★★ H18.1.3

マイライフ・アズ・ア・ドッグ その名を世界に知らしめるきっかけとなった、ラッセ・ハルストレム監督の名作『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』を観る。本作はアメリカでも注目され、88年のアカデミー賞 最優秀監督賞、最優秀脚色賞にノミネートされる。映画好きの中で必ず出てくるタイトルであり、私も大好きな作品なのだ。

 12歳の少年イングマルの日々は、ことあるごとに兄にいじめられ、ママは病気でベッドに寝たきり、パパは遠くへ出稼ぎに行ったきりと、もううんざりする毎日。それでも人工衛星に実験で乗せられたライカ犬よりはまだましと、自分に言い聞かせている。そんな中、日に日に病状が悪化していくママの療養のために、遠くガラス工場のある小さな町の、グンネル叔父さんの家に預けられることになる・・・。

 のどかな田舎町で過ごす日々の中で、少しづつ成長していくイングマル少年を、監督の優しい眼差が映し出していく。その詩情あふれるシーンと、素朴でヘンテコで優しい町の住人達が繰り広げる出来事の数々が、次第にイングマルの心を癒していく。そしてイングマルと同じように、観ている自分の心までもいつしか癒されていることに気づく。観終わった後のあったか〜い温もり感が最高に心地いい作品なのだ。

イングマルは自分に降りかかる不幸を、最初人工衛星に乗せられ見殺しにされたライカ犬に、自身をダブらせているんだけど、次第にライカ犬は家に残してきた愛犬のシッカンに重なり、ついには病気で亡くなってしまったママに重ねてしまう。それは自分のことしか考えていなかったイングマルの心が、次第に周りに向けられ、残されて死んでしまったであろうシッカンを想い悲しみ、ママに対して自分のふがいなさを嘆き、死をその小さな体で受け止め涙する。一つ一つ悲しみを乗り越えて成長していくイングマルの姿が、そのふっくらしたほっぺの様に瑞瑞しい。

ラッセ・ハルストレム監督の作品は、「ギルバート・グレイプ」や「サイダーハウス・ルール」もそうであったように、暖かさの中にいつも人生の厳しさを突きつける。そして厳しさを乗り越えた主人公に、光は穏やかに降り注ぎ、爽やかな風が吹き抜けていく。本作もそんな人間の力強さを愛してやまない監督の、やさしさがいっぱいに溢れた素敵な映画なのだ。

ぜひたくさんの人に観て欲しいと想う映画なんだけど、なんかやっぱりそっと自分だけにとっておきたくなる、そんな大切な作品なんだなあ。