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『ミレニアム トラゴン・タトゥーの女』
【感想】 ★★★☆ H24.5.20

 全世界で800万部を売り上げる大ベストセラー小説となった、スウェーデンの作家スティーグ・ラーソンのミステリー小説「ミレニアム」三部作の第一部を映画化した『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』を観る。このタイトルを聞くと、すぐに去年公開されたデヴィット・フィンチャー監督の同名作品を思い出すが、あちらのハリウッド版はリメイクで、こちらのスウェーデン版がオリジナルなのだ。

 雑誌「ミレニアム」のジャーナリストのミカエルは、大物実業家の不正を暴いたが、策略にはまり逆に名誉棄損で告訴され、有罪判決を下されてしまう。しばらく「ミレニアム」から身を引くことを決意したミカエルの下に、ある大企業の前会長から、36年前に姿を消した少女の、失踪事件の調査を依頼してきた・・・。

 当時の警察も投げ出した少女失踪事件の真相を、様々なアプロートで少しずつ謎を解明していくミカエルと、天才ハッカーにしてフリーの調査員リスベット。失踪した少女を追っていくうちに、真相は混迷を深め、いつしか未解決の猟奇殺人へとつながっていく。このリスベットがタイトルのドラゴン・タトゥーの女なのだが、このキャラクターが秀逸で、演じるノオミ・ラパスの寡黙でミステリアスでいて、暗い過去を背負った孤独感が絶品だった。一方のミカエルだが、設定では敏腕ジャーナリストのはずなんだけど、途中鋭い観察力を発揮するシーンとかあるわりには、どこかバカっぽくてお人よしなおじさんって感じで、原作は読んでないがちょっと違ってるんじゃないかなあ、なんて思った。この二人のコンビネーションにより、真実が少しずつ解き明かされていく過程はやはりスリリングで面白く、153分という長時間もどっぷりと入り込んでしまいあっという間に観終わってしまった。ただ状況証拠を少しずつ積み上げていくという手法なので、探偵やコロンボのように、わずかな痕跡から犯人の性格や行動を推理するというものがなく、謎解きミステリーとしてはちょっと物足りないかな。

ジャンルでいえば「羊たちの沈黙」や「セブン」のようなサイコスリラーものなんだけど、この作品どういう訳かリスベットをはじめ、女性に対して暴力的であり虐待や凌辱を加えるということに偏執的であり、必要以上に生々しいシーンが挿入されている。明かされる真実もおぞましく、見ていて辛い。人間の尊厳が、他人のエゴによて踏みにじられる様を見せられているような、なんとも不愉快な気分にさせられる。この作品のテーマの一つが、女性に対する偏見や暴力を痛烈に批判するものなんだろか、なんて感じてしまう。私のようにミステリーを存分に堪能しようと思って見ると、余計なエピソード作りすぎだろうって思ってしまう。まあそこはたぶん第2部第3部へと続く伏線なんだろうから、仕方ないんだろうけどねえ。

それから容疑者は依頼人のヴァンゲル一族の中にいると言う訳で、人物相関図のようなものでそれぞれ一族を紹介していくんだけど、とにかくいきなり名前の洪水を浴びせられるので混乱してしまうんだよね(^^;)外国のミステリー作品でよくあるんだけど、名前と人物がなかなか結びつかなくて、余計なストレスを感じてしまう。もうちょっと分かりやすい名前にしてくれないかなあ(^^;)それでもう一度見ようかなあ、なんて思っちゃうんだけど、本作はもう見たくないかも・・・。いやいや、今度はハリウッド版を見なくちゃ(^^)