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『明るい瞳』
【感想】 ★★★ H21.10.10

明るい瞳“深い森の木洩れ日の下で、わたしのなかの、ひかりをみつけた”
 2005年のフランス映画賞の最優秀新人監督に与えられるジャン・ヴィゴ賞を受賞したジェローム・ボネル監督の『明るい瞳』を観る。まったく知らなかった映画で、フランス映画関連のサイトを検索して見つけた作品。予告編の最後に流れる、まさしく深い森の木洩れ日の下で、気持ち良さそうにお風呂に入ってる女性のシーンがとっても素敵だったので、おもわずレンタルしてしまった。

 心に病を抱えたファニーの、おかしな言動に振り回されながらも、兄夫婦は優しく見守りながら一緒に暮らしていた。しかしある日町で兄嫁の不倫現場を覗いてしまったファニーは、その夜兄嫁と衝突してしまい、兄からまた病院へ戻るように告げられる。居場所を失ったファニーは、家を飛び出してしまう・・・。

 フランス映画の人の苦悩と歓びを内面から描き出すしっとり感。わたしのお気に入りだった森での入浴シーンをはじめ、カラフルな椅子を山のように背負って歩くファニーの姿など、写真で切り取っておきたくなるようなアートなシーン。そんな素敵なシーンの数々に監督のセンスを感じる。
映像特典で監督が、この作品はコミュニケーションというテーマに沿って、2部構成になっていると説明していた。言葉が通じるけどコミュニケーションが取れない前半と、言葉が通じないから心を通わせることができるという後半。ただストーリー的に、淡々系が好きな私が見ても退屈で、どのシーンもあと一歩というところではぐらかされるというか、ごまかされているような気分にさせられてしまった。ほんとあとちょっとでいい感じなんだけどなあ。

言葉が邪魔になるときって確かにあると思う。ファニーが偶然森に住む木こりと、言葉を超えて心を通わせるという、いつもならそんな奇跡的な出会いも受け入れられるんだけど、この作品についてはなぜか納得できなかった。それはなぜか奇跡的な相性であったというだけのこと、みたいに。さらに納得できなかったことは、物語がそんな彼女のこれからの未来という、もっとも肝心な問題について、最後まで何も解決されないままに終わってしまうこと。度々挿入される主人公のファニーが歩いたり移動しているところを、カメラが後ろから映し出すシーン。どこへ向かっていくのか分からないという彼女の心を、語らないということで余韻を残すということだったと思うんだけど、ここは中途半端にせず、暗くても明るくてもいいので少しでも暗示させるシーンを盛り込んで欲しかった。
やっぱりラストは、ファニーと優しい兄との心を通わせるシーンが見たかったなあ。