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『レ・ミゼラブル』
【感想】 ★★★★ H25.6.20
“愛とは、生きる力”
 今もなお世界各地でロングランを続けている傑作ミュージカルを、「英国王のスピーチ」のトム・フーパー監督が映画化した『レ・ミゼラブル』を観る。第85回のアカデミー賞3部門を受賞し、ブルーレイ発売まで期待は高まるばかり。発売日に一番豪華なコレクターズBOX5枚組のブルーレイを奮発して買ってしまった。ただこのブルーレイの発売が待ちきれず、同じくとてもレビュー評価の高かった「レ・ミゼラブル 25周年記念コンサート」を先に購入して観賞。ただこれで期待度のハードルがさらに上がってしまい、なんともまずいことに・・・(^^;)

 1815年、ジャン・バルジャンは、貧しさのために飢え死にしそうになっていた妹の子のために、パンを一つ盗んでしまい、19年もの月日を投獄されてしまう。そしてやっと仮釈放されたジャン・バルジャンだったが、前科者に世間は厳しく冷たかった。ある日老司教に助けられ、教会で食事とベッドを与えられたが、思わず銀食器を盗み出し逃げてしまう。すぐに捕まり、憲兵により再び教会へ引き出されたジャン・バルジャンに向かって、老司教は優しく語りかける。「友よ、急ぎ過ぎすぎてうっかりなされたな。これも差し上げたのに」といい、一番高価な銀の燭台を二本手渡す。憎悪に凝り固まっていたジャン・バルジャンの魂は、大きな慈悲の力により解放されていった・・・。

 ヒュー・ジャックマンをはじめ、出演者の圧倒的パフォーマンスで披露されるミュージカルシーンを、とっても期待していたんだけど、事前に観た「25周年記念コンサート」の、本場ロンドン公演の舞台で披露された歌が余りにも圧巻過ぎて、どのシーンも見劣りしてしまうという事態になってしまった。とにかく凄い舞台だった。いやいや、このブルーレイの話は別の機会にして、本題に入ろう。確かに歌はそれなり聞きごたえはあった。ただヒュー・ジャックマンは本場ブロードウェイのミュージカルで賞もとっていたのを知ってたので、これくらいの上手さは当たり前で、むしろあまり驚きがなかった。そしてアン・ハサウェイの、胸も張り裂けんばかりに歌い上げるシーンは、期待通りとても素晴らしかったが、11Kgの減量に加え実際に丸坊主にした頭で、涙ながらに歌う姿はあまりにも痛々しすぎた。しかも彼女は本作でアカデミーの助演女優賞を受賞していたので一番期待していたのに、早々に舞台から降りてしまう始末。ラッセル・クロウにいたっては、なぜ君が出ているのかという程度。決して下手ではないんだけど、不思議なくらい心に響かない。表情や仕草など空気で語る役者だから、淡々と歌っている姿がどうにも不自然なんだなあ。

と、一通りネガティブな感想を語ってしまったけど、やはり本作は歌の上手い下手は関係なく、すべての出演者がライブで熱唱している姿は、熱く胸を振るわせてくれる。劇場で臨場感MAXで聞いていたら、間違いなく最高だっただろうなあ。さらにロングランでいつまでも愛され続けている楽曲はどれも素晴らしく、その調べに乗って語られる抒情詩を思わせる歌詞は感動的だった。そしてなにより、誠実に強く正しく生きようとするジャン・バルジャンをはじめとする登場人物たちが織りなす人生は、観る者に湧き上がる力を感じさせてくれた。158分という上映時間も、まったく飽きさせることもなく、最後まで見応え十分。やっぱり劇場で観とけばよかったなあ〜。

恥ずかしながらヴィクトル・ユゴーの原作は読んでないので分からないが、明らかに省略されているエピソードがあるようなので、機会があればしっかり小説を読んでみたい.。ただ調べてみたら全訳は凄まじい文章量で、途中挫折者が数知れずということなので、とりあえずコンパクトにわかりやすくまとめられた新訳の文庫本で約870ページぐらいというところで、ええ〜、まあいつかね、ハハハッ(^^;)