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『コーラス』
【感想】 ★★★☆ H17.12.24

コーラス 涙がこぼれそうなとき、歌があった。
本国フランスであの『アメリ』を越える観客動員数を記録し、04年度のアカデミー賞外国語映画賞と主題歌賞にノミネートされた感動作『コーラス』を観る。子供が主演するヨーロッパ映画にハズレがないことと、さらに音楽がテーマというもうこれだけで傑作間違いなしでしょ〜、っていう感じで、予告編もまったく観たことなかったけど、発売日に即購入。そして観終わってまず思ったことは、予告編観なくて良かった〜(笑)。いつものようにこの映画の予告編にもいいシーンを出しすぎていることと、なにより微妙に作品の雰囲気を勘違いさせる作りになってた。

 第二次大戦から4年後の1949年フランスの片田舎、親元を離れて、または親を亡くした子供達が暮らす寄宿学校でのお話。そこは寂しさや怒り、やり場のない感情を持て余した生徒達の間で、トラブルが絶えなかったが、校長の方針で罰則により厳しく縛り付けられていた。そんなある日、一人の音楽の先生クレマン・マチュー(ジェラール・ジュニョ)がやって来る・・・。

 一人の先生との出逢いが、荒んでいた生徒達の心を癒し、夢と希望を見出していく・・・、ストーリーはよくある話なのだ。でもそこはフランス映画、ハリウッドのような派手な演出もなく、あくまでもナチュラルに音楽によって語られるメッセージ。ハリウッド映画や「金八先生」を見慣れてる人には、ちょっと物足りなさを感じさせるかもしれないけど、こういう白黒つけないグレーの展開こそがフランス映画風であり、かえって見終わった後にいろんなことを考えさせられ、深い余韻を残す。

ジャン=バティスト・モニエ少年の天使の歌声に胸を打たれるが、私のツボはやはり音楽教師役のジェラール・ジュニョの素晴しい演技と、思わず唸ってしまうほどの絶妙な表情。彼がインタビューで語った「自分が平凡だということを自覚し、平凡を磨いていった」という言葉どおり、平凡だが生徒を導く目は優しさに溢れていた。ほんとにこの俳優さんいい表情をするんですよねえ。

そしてこの映画で一番感じたことは、子供時代に自分を導いてくれる、自分を高めてくれる大人に出会うことがいかに大切かということ。それは親であったり、学校の先生だったりするだろうが、子供は育てたとおりに育つ。この映画のマチュー先生は生徒達に、「このままじゃいけない、こう生きるんだ」とは言わない。ただ自分の愛する音楽の素晴しさを生徒達にも感じさせたい、それだけだった。音楽とはこんなに素晴しいものなんだと。そしてなにより人生とはもっと素晴しいものなんだと。やっぱり、ここ!この直接セリフには出てこないがそう感じさせるところが、この映画の素敵なとこなんだなあ。

ラストもハッピーエンドや涙を狙ってないところが、私は好きだなあ〜。