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『レオン 完全版』
【感想】 ★★★★☆ H22.2.7
 公開当時に上映時間が111分だったオリジナル版の「レオン」に、監督リュック・ベッソンが新たに22分のシーンを加えた『レオン 完全版』を久しぶりに観る。既に完成されていたオリジナル版に、新たに編集の段階で泣く泣くカットした部分を加えて公開するという完全版は、大抵が間延びしたりしてテンポが悪くなり、あまり成功した例はないが、本作はさらに魅力的な作品になってかえってきた珍しい作品だった(^^)

 麻薬取引のこじれから、一度に両親と弟を殺されてしまった少女マチルダ(ナタリー・ポートマン)は、同じ階に住む無口な男レオン(ジャン・レノ)に命を救われる。レオンは実は腕利きの殺し屋で、面倒は避けたかったが、マチルダの悲痛な心の叫びに動かされ、復讐のための暗殺の手ほどきをするようになる・・・。

 殺し屋という生業の中で、一切の感情を捨ててしまった男は、助けを求めて現われた少女によって、次第に人を愛するという心を目覚めさせていく。そんな殺し屋としての凄みと、アウトローとして生きる者の孤独を寡黙に演じるジャン・レノ。少女の自分に向けられる愛に翻弄され、少年のように戸惑うピュアな表情も印象的だ。そして本作がデビュー作となったナタリー・ポートマンの美しい顔立ちに、感情豊かな表情で魅せる大人顔負けの鮮烈な演技。この強烈な二つの個性を、鮮やかにシンクロさせるベッソンのさすがの手腕が冴える。さらに本作で最高の演技を見せたであろう、ゲーリー・オールドマンの狂気が加わることで、「レオン」はいつまでも忘れられない傑作となった。

オリジナル版はハードボイルドなイメージがあったが、この完全版で新たに加えられた、レオンの過去が語られるシーンや、マチルダの告白のシーンによって、二人の関係がさらに深く掘り下げられ、成就しない純愛への哀しみのカウント・ダウンに向けて、一つ一つのエピソードがより心に染みていく。さらに凄まじいシーンの合間に、新たに挿入されたマチルダとのじゃれ合いや、父親代わりのトニーとの会話という微笑ましいシーンは、レオンの殺伐とした心の中に暖かい灯を燈すように、見ているものに安らぎを与える。まあレオンの意外な幼稚さにちょっと違和感を感じるというところもあったが、そんなこともプラスに変えてしまうほどの、本作は見ているものを釘付けにしてしまうパワーと魅力に溢れている。

ラストはスティングの歌を聞きながら、胸が締め付けられる切なさに、いつまでも流れるエンドロールを眺めていた。