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『フランスの思い出』
【感想】 ★★★★☆ H22.4.9

 1987年本国フランスで興行1位を記録し、アメリカをはじめ世界中でヒットし、数々の映画賞を受賞した『フランスの思い出』を観る。実はこの作品は私がフランス映画を見るきっかけとなった思い出の作品であり、大好きな作品なのだ。それまではフランス映画って、ボソボソとしか聞こえないフランス語で、ず〜っと喋ってばかりで退屈っていうイメージしかなくて(何を観て言ってんだか・・・)・・・(^^;)。

 緑の田園が広がる静かな村のバス停に降り立つ母と息子。パリからやって来た9歳になる少年ルイは、母の出産が近いために、この村にいる幼なじみのマルセルの家に一人で預けられることになる。とんぼ返りで帰っていく母に泣きつくルイだったが、不安でいっぱいの田舎生活に戸惑いながらも、いつまでも忘れられない素敵な夏休みは、こうして始まった・・・。

 ジャン=ルー・ユベール監督の実の息子アントワーヌの、ほんとに甘えん坊の都会っ子が田舎に放り込まれて戸惑っているような姿に、自分が遠い子供時代に感じた不安だったことや楽しかったことを呼び覚まされ、まるで疑似体験しているような甘く切ないノスタルジーに包まれる。ルイ少年と燐家のおませな少女マルティーヌの、演技とは思えないあまりにもナチュラルな姿と、子供らしい澄んだ笑顔に加え、その年のセザールの女優賞と男優賞をW受賞した、ルイを預かる夫婦役を演じたアネモーネとリシャール・ボーランジェの温かいまなざしに、言い知れないほどの癒しを感じていく。そしてその癒しの力は、ただルイとペロが手をつなぐという何気ないシーンにさえ、涙を流させる。特にペロ役のリシャール・ボーランジェの、乱暴だけど内に溢れる優しさを秘めた演技は、切ないほど心を打つ。この男優さん、他にも「ディーバ」や「タンゴ」にも出演してたけど、どれも渋い演技で大好きな俳優さんなのだ。、

何年も前、TSUTAYAでまだVHSのビデオでレンタルされていた頃に見た作品だったけど、こうしてまた久しぶりに見てもとっても素晴らしく、優しい温もりに溢れた素敵な作品だった。ただひとつ、冒頭で映されるウサギの皮を剥ぐシーンは、あまりの衝撃で直視できず、これから見ようとされる方は、トラウマにならないようにちょっと目線を外して見ることをおすすめします(^^;)