サブリナの休日トップページミニシアター2/ミニシアター1/ミニシアター3

『人生に乾杯!』
【感想】 ★★★ H22.8.11
“ふたりなら、きっと明日を変えられる。”
おじいちゃんとおばあちゃんが銀行強盗をしちゃうという、ハンガリー発のハートフル・ムービー『人生に乾杯! 』を観る。

 1950年代後半、運命的な出会いによって結ばれたエミルとヘディも、今や81歳と70歳となっていた。年金で細々と暮らしている中で、いつしか二人の間にも隙間風も吹き始め、さらに追い討ちを掛けるように借金取りにも追われる日々が続いていた。そしてついに二人の思い出の品であり、ヘディの最後の誇りだったダイヤモンドのイヤリングを手放す日がやってくる。その夜、ベッドから起き出したエミルは意を決して、愛車チャイカで一人走り出して行った・・・。

 見る前は貧しさから老夫婦が銀行強盗をしてしまうという、高齢化社会へ向けてあまりにも厳しい決断をさせる、未来に希望を見出せない世相を映す、ハートフルだけど切ない作品だと思ってた。だいたい銀行強盗をする映画はろくなラストが用意されてないしねえ。でも本作は笑顔を取り戻していく二人と、それを追いかける刑事達のどん臭さをはじめ終始ゆるい展開に、次第に二人を微笑ましく見つめ、やさしい気持ちで満たされていく。エミルの運転するチャイカの助手席で、窓を開け気持ち良さそうに風を感じるヘディ。素敵なシーンでした。特にこのヘディ役を演じた女優さんの、貧しさの中にも凛とした気品と強さを感じさせる演技は、印象的だったなあ。

でもねえ〜、やっぱり幸せを掴み取るために犯罪を起こすっていうのは、どうも後味が悪く、その盗んだお金で豪遊する姿は見ていて複雑な気分になってしまった。乾ききった二人の間に、再びお互いを思いやる気持ちがよみがえってくるというストーリーは素敵なんだけど、なにせ元凶もお金であり、そのすべてを解決するのもお金なんて、人生の重みっていうかあまりにも安っぽ過ぎなんじゃないかなあ。まあそこにハンガリーという国の高齢者に対する厳しい現状があるんだろうけど、私はやっぱり「クリスマス・キャロル」のように、人生お金だけじゃないんだよってテーマのほうが、好きだなあ。

ラストはやっぱりそういうことになるでしょ〜、なんて思ったんだけど、これがこれが・・・(^^)
邦題の銀行強盗をして乾杯はないだろうって思ったんだけど、原題はロシア語で「おしまい」っていう意味を考えると、このラストももっとまっとうな「おしまい」を迎えられるような、弱者にも優しい素敵な世の中にして欲しいっていう、メッセージが感じられる。またまた邦題、やっちゃいましたか〜(^^)