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『キッチン・ストーリー』
【感想】 ★★★☆ H21.4.4

キッチン・ストーリー “ゆっくり、ともだち。”
2003年欧州で絶賛され、各映画賞を受賞したノルウェー発のハートフル・ムービー『キッチン・ストーリー』を観る。

 1950年代初頭、スウェーデンからノルウェーの国境を越えて走ってくる、トレーラーを引いたボルボの一団。彼らは新しい家庭用品の開発のために、ノルウェーにおける独身男性の台所の動きを調査するためにやってきた。監視する家にトレーラーを横付けにし、24時間監視するものだったが、調査員は相手の生活を乱さないように、一切の会話を禁じられていた。調査員フォルケは、家からまったく顔も出さない農夫のイザックに、中にも入れてもらえず始まらない調査に困り果てていた・・・。

 スウェーデンの調査員フォルケとノルウェーの農夫イザックが、国を超えて友情をまさしくユックリと育んでいく物語。お互いの優しさに触れ、少しずつ心を開いていく二人の姿が微笑ましく、次第に心が温かくなっていく。この作品で感じることは、人は誰でも心のぬくもりを渇望し続ける寂しがりやであり、心とはほんの小さな優しさに触れるだけで満たされていくもの。そして日々何かから監視され、抑制を受け続ける現代人に、この作品は豊かな人生を送るために本当に必要なものを、さりげなくそしてシンプルに描いていく。まさに理想の生き方であるスローライフな世界がここにある。

まるで本当の調査員と年老いた農夫のように、キャスティングされた二人の俳優が役柄にぴったりであり、ワンカットで誕生日を祝う長回しのシーンをはじめ、抜群の空気感を醸し出す完璧な演技が素晴らしかった。控えめで騒々しくなく、ただ優しい空気だけが画面を通して伝わってくるところは、大きな動きも事件もなく、人によっては退屈と感じる方もいるだろうけど、私は好きなんだなあ。また予告編にもあるように、チョコレートを食べたり、ネズミ捕りに指を挟んじゃうシーンなど、ところどころに入るクスッと笑えるところも、いいねえ。

監督の卓越した演出力により、心地よい心の温もりを感じつつ物語は進み、完璧なラストを迎えるんだけど、この出来過ぎなラストに私は不満が残る。この完璧なラストのために唐突に起こることが、いかにもであり無理やり的で、あざとさを感じ嫌なんだよねえ。それまでが凄く良かっただけに、私的には大きくマイナスです。それでも見終わった後もしばらくあったか〜い気持で、いい映画を観たという満足感に浸っていました(^^)