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『キンキーブーツ』
【感想】 ★★★☆ H21.6.28
キンキーブーツ “偏見を捨ててちょうだい!”
 倒産寸前の老舗靴工場の再生という実話を描いた、イギリス発のハートフル・コメディ『キンキーブーツ』を観る。2006年のサンダンス映画祭のオープニングを飾り、本国イギリスでも「フル・モンティ」以来の話題となり、社会現象を巻き起こした。まあどんな社会現象だったかは知らないが、私の大好きな「フル・モンティ」以来というところと、一味違う英国コメディときたら、もうこれは見るしかないでしょう。

 突然の父親の死により、思いがけず老舗の靴工場の社長となってしまったチャーリー。しかし工場が既に倒産寸前の状態だったことを知り、最初の仕事が不本意ながら社員のリストラとなってしまう。そこへ従業員の一人ローレンのアドバイスにより、一旦は再生のきっかけを掴むが、卸の契約もなくなり工場は売却へと傾いていく。そんなある日、チャーリーはロンドンの路地裏でドラッグ・クイーンのローラと出会う・・・。

 倒産寸前だった靴工場が、起死回生を狙い、従来のトラッドシューズから男性用の女性ハイヒール・ブーツの製造に転換し、当時イギリスで一大センセーションを巻き起こしたという実話がまず凄い。そしてそんな実話を元にこんな素晴らしい作品ができたことが嬉しい。やはりポジティブな人の下に、幸せっていうやつはやってくるんだと改めて思わされる。新社長チャーリーのために協力するローラとロレーンに、チャーリーの情熱に次第にひとつになっていく従業員達がラストで迎える、ミラノのステージのなんと感動的なことか。
そしてそのステージで歌われる「These Boots Are Made for Walkin'」をはじめ、本作に挿入されていた曲の選曲がまたいい。観終わった後すぐにナンシー・シナトラの同曲をダウンロードした。サントラ盤も要チェックなのだ。

キャスティングについては、ほとんど知らない人たちばかりで、かえって新鮮だったんだけど、主人公のチャーリー役のジョエル・エドガートンのあまりの華のなさが惜しい。最近良く見るジェームズ・マカヴォイだったらなあ、なんてふと思った。ただしその華のなさを補って余りある存在感を見せてくれた、ローラ役のキウェテル・イジョフォーのなりきり度100%のドラッグ・クイーンぶりがいい。ステージでの堂々とした歌いっぷりに、時々見せる偏見への苦悩の表情も含めて、とっても素晴らしかった。その演技はその年のゴールデン・グローブ賞の主演男優賞にノミネートされている。

 本作を観て思ったんだけど、「プリシラ」や「トーチソング・トリロジー」、最近では「ミルク」をはじめ、ゲイが登場する映画はなんでどれも素敵なんだろう。私なりに思ったのは、それはいつも彼ら(彼女ら?)が自分に正直に生きているということと、同時にマイノリティの悲しみも背負っているという、これ以上ない人間味溢れるキャラクターとしてペーソスたっぷりに描かれるからだろうなあ。それからこれもいつも感じることなんだけど、最初はその風貌に思わず引いてしまうんだけど、物語が進むにつれてだんだん愛おしくなってくるのだ。いやいや、癖にならねばいいがなと、ちょっと心配になる(^^;)

ラストで迎える幸せ感が最高にハートフルな作品だった(^^)