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『キック・アス』
【感想】 ★★★☆ H23.3.10

 ”特殊能力ゼロ、モテ度ゼロ、体力微妙−なりきりヒーローが世界を救う”
 おなじみの全米初登場No.1(こればっかり)に、日本でも口コミで評判を呼んだ、何の特殊能力も持たないという意外なコミック・ヒーロー『キック・アス』を観る。

 ニューヨークに住むこれといってとりえもないごく普通の高校生デイヴは、友人達に尋ねる。「どうして誰もスーパーヒーローになろうと思わないんだろう?」。コミック・ヒーロに憧れる余り、デイヴはネットで緑色のボディースーツ購入する。そのスーツを着込み、鏡の前でポーズを決めたりしていたが、ある日ついに正義を遂行するために、街にパトロールに出かける・・・。

 何の能力もなく、ヒーローに憧れる気持ちだけでヒーローになりきり悪と闘う高校生。全然弱いので、最初に偶然出くわした車上泥棒に、いきなり腹を刺されてしまうというとんでもない展開にビックリ。オープニングのゆるさから、完璧にコメディ路線であり、これは主人公のへたれシーンを適当に混ぜ合わせながら、いろんな偶然により本当のヒーローになっていく、みたいな展開を勝手に想像してたのに、これがこれが。はたまた最近の流行でもある暗さをねらって「タクシードライバー」みたいに、だんだん病んでいく展開も予想したんだけど、公私共にコミック・ヒーロー大好きで知られるニコラス・ケイジ扮するビッグ・ダディと、1997年生まれでまだあどけなさの残る少女クロエ・グレース・モレッツ扮するヒット・ガールの父娘の登場により、作品は血なまぐさいヴァイオレンス満載のアクションムービーに一変する。これは間違いなくR15指定だわ。特にヒット・ガールの、いかにもノー天気な可愛らしい音楽をバックに、無邪気にザックザックと悪者を串刺しにする殺戮振りは、凄まじい限り。なんでこんな小さい女の子にこんな役をやらせるんだという嫌悪感に、コミックだから映画だからとしても割り切れない気分でいる一方、そのスピード感溢れる見事なアクションシーンに釘付けになり、あまりの鮮やかな惨殺シーンは快感さえ感じてしまう始末。それでもなんだかすっきりしない気分だが、これだけの切れ味のいいアクションシーンを見せられたら、そりゃあ評判になるだろうと納得させられる。見終わった後も、アクションシーンだけを何度も再生し直してみてしまった。黒いマスクの下に見え隠れする幼い表情に、ついにアクション映画は、こんな小さい子まで使うような禁断の領域にまで入ってきたかという胸糞の悪さと、ギャング達がバタバタとやられていくという痛快さ。これはとんでもない映画だよ。いろんなサイトで高評価をもたらしている作品なんだけど、私的にはやはりちょっと素直には楽しめない作品だったかな。まあたかが映画だと割り切り、倫理的なものを感じなければ、危険な魅力に溢れた刺激的な映画かもしれないけど。

私は特に退屈だという声が大きい前半の、弱いながらも目の前で繰り広げられる悪事を、もう見逃すことはできないと気合だけで闘うキック・アスの姿の方が好きで、例えばキック・アスがこそ泥を捕まえるみたいな小さい事件に絡むとか、ヒット・ガールが普通の生活で戸惑うみたいな楽しいエピソードをもっともっと見たかったんだけど、それはたぶん製作されるであろう、続編で語られるんだろうなあ。

 ▼公式サイト:『キック・アス』公式サイト