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『かもめ食堂』
【感想】 ★★★★☆ H20.4.5
 “ハラゴシラエして歩くのだ”
 あまり見ない邦画の中で、ず〜っと気になっていた映画『かもめ食堂』をやっと今日見た。たぶんこの作品を見る理由として、あるTV番組を連想する人がたくさんいると思うんだけど、どうでしょう。私は「やっぱり猫が好き」の大ファンで、この番組がおおいに影響しています。あまりにもあの恩田三姉妹の世界にはまり過ぎて、DVDを全部そろえてしまい、今でもたまに見ては癒されている。一番好きなエピソードは・・・、え〜その話はまたいつか。

 ヘルシンキの街角に食堂「かもめ食堂」をオープンして一ヶ月。未だ一人も訪れる客もなく、店主サチエ(小林聡美)は今日もせっせとグラスを磨いていたが、ついに待望のお客様第一号の、日本かぶれの青年トンミがやってくる。サチエがTシャツのニャロメにふれると、トンミは突然ガッチャマンの歌を教えてくれと言い出す。出だし以外ほとんど思い出せないサチエは、カフェで偶然見つけた日本人ミドリ(片桐はいり)に、ガッチャマンの歌を教えてもらう。そしていわくありげなミドリの話を聞きくうち、歌を教えてくれた礼として、家に招待することに・・・。

 もう最初のガッチャマンの歌からつかみはOK。暖かい日差しの差し込む、食堂という名の穏やかな空間で繰り広げられる、他愛ない会話と出来事。カット割を極力減らし、長回しで交わされるこの他愛ない会話を聞いているだけで癒されていく。
食堂に訪れたマサコがサチエに、なんでフィンランドで食堂をしているのかを聞くシーンの中で、

 「いいわねえ〜、やりたいことをやっていらして」
 「やりたくないことはやらないだけなんです」

シンプルに生きる。何のしがらみもなく見栄もなく、肩の力を抜いてただシンプルに生きる。出来そうで出来ない、まさしく誰もが日々求めてやまない理想の世界が、この小さな食堂の空間に存在する。かもめ食堂のメインメニューがおにぎりっていう、一番シンプルな食べ物にこだわっていたのもそういう意味を込めてたんだろうな。

 特に大きなエピソードもなく、ただたんたんとことが進むんだけど、見終わった後になぜかいい気持ちになってる。そんな“たんたん系”の映画が日本映画にもあった!。こういう作品を見た後にいつも思うことは、癒されることはもちろんだけど、なんの盛り上がりもなく、退屈と感じる人もいるだろうと思いつつも、こういう作品に魅力を感じ、そしてその作品の魅力を感じ取った自分の感性に乾杯って気分になれること。やなやつだねえ〜(笑)気取っていうと、まさしく理解するんじゃなくて、心で感じる映画って感じかな。
ただ欧州のタンタン系作品の、見終わった後に感じる、人間っていいな〜、生きるってただそれだけで素晴らしいな〜みたいな感じじゃないんだよねえ。異国の中でも、自分らしく凛として生きる店主サチエの姿はまぶしく、多くの女性の共感を呼ぶものであったと思うけど、なんだか現実逃避的な感じがしないでもない。まあそれが癒しにつながってるっていえばそうだけど・・・。

 キャスティングも良かった。ただそこにいるだけで独特の空間を作り出すもたいまさこと、そのインパクトある顔芸が怖い片桐はいり。そして小林聡美の、出演作のすべてに感じることなんだけど、この店主のサチエのような凛とした存在感と、ナチュラルな演技。あのキミちゃんがねえ〜(笑)素晴らしい女優さんになりましたね。“豚見昼斗念”ももちろんいい味出してました。ただ、ただ残念なのはそこに室井滋がいないことが寂しい。確かにあの騒々しさは映画に合わないかもしれないけど、せめて食堂を訪れる日本人観光客ぐらいでも登場させてほしかった。でえ〜、れいちゃんがこう言うの
「あれ?どこかでお会いしませんでしたか?」(笑)しばし見詰め合う三人・・・。いやあ〜、見たかったなあ。

 ネットを調べてたら「かもめ食堂占い」っていうのを発見したんだけど、なんかあなたをちょっぴり幸せにするメニューは何でしょうか?って。ただいきなり名前と生年月日を入力して下さいってくるから、新手の詐欺かと思っちゃいました(笑)。結局フシギダネと入力し、幸せメニューはコーヒーだった。ま、ただそれだけのことなんだけど・・・。