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『アイ・アム・レジェンド』
【感想】 ★★★☆ H25.8.28

 リチャード・マシスン原作「地球最後の男」の三度目の映画化となった『アイ・アム・レジェンド』を観る。本作を観た後に1964年版の「地球最後の男」を観たが、こちらの方が原作に忠実に映画化されており、本作とまったくストーリーが違っていたが、あの時代にこんな衝撃的な映画が作られていたんだとびっくりだった。なんならこっちの方をそのままリメイクした方が良かったんじゃないかと思えるぐらいだったんだけど、なんでこんなにストーリーを変えちゃったのか・・・。

 2009年、一人の女性科学者によりがんの治療薬が開発された。はしかウィルスから作られた治療薬は、試験投与したがん患者をすべて、完全に治癒させることに成功する、しかし突然のウィルスの変異により、患者たちは次々と狂犬病のような症状を発症させ、その感染力の強さからウィルスは瞬く間に世界中へ広がっていった。そして3年後・・・。

 私が全く気にならなかったライフラインが普通に整ってるとか、タイトルと全然違うただのホラー映画とかで、いろりろ辛口のレビューが多い本作だけど、私は結構この作品好きなんだなあ。まあ後半のCGゾンビみたいなのと戦いは、言われている通りあんまり面白くないのは確かだし、そもそもあんなアクションシーンを期待して見た作品じゃあないからねえ。でも私はオープニングから中盤辺りまでシーンが、そんなことを問題にしないくらい素晴らしい出来だと感じた。まずオープニングのCGではないリアルな荒れ果てた街の様子とか、何かに怯えて鉄の扉でガードした部屋に隠れなければならない境遇であるとか、いきなり何がどうなっているかわからないところへ、突然放り込まれた感がいい。そして孤独の中で静けさと恐怖に怯えながら、わずかな希望を求めて闘い続けている主人公の、孤独な絶望感と、張りつめた緊張感が、ウィル・スミスの熱演もあってじつに素晴らしいのだ。特にシカを追ってビルの中に入ってしまった愛犬のサムを、何かが潜んでいるけど助け出さないといけないと、暗闇の中を奥へ奥へと進んでいくシーンの凄まじい緊迫感は、もうそのシーンを見れただけでも満足と思えるくらいの絶品のシーンだった。「ここはやばいんだっ』と言いながらも、今やただ一人(一匹)の大切なパートナーであるサムを探しに行く主人公の様子が、悲痛な心の叫びが聞こえてきそうなほどの切なさで泣ける。さらに暗がりでライトに照らしだされたダーク・シーカー達のショッキングな不気味さといったらもうない。画面には見えないけど、何かが息づいていると感じさせるシーン、好きです。突っ込みどころ満載だけど、ウィル・スミス主演作の中では、私は一番好きな作品だなあ。

でもねえ、やっぱり後半怒涛の展開になり、いきなり現れる母娘や、CG丸出しで暴れまわるダーク・シーカー達によって、それまでじっくりと作ってきた、静かなる恐怖と緊張感に包まれたムードは吹き飛んでしまい、騒々しいただのホラーアクション映画に変わってしまったことがかえすがえす残念だった。それと観終ったあと、後半部分が上映時間の関係なのか、あまりにも駆け足過ぎて、ここをもっと丁寧に描いていたらもっといい作品に・・・、なんて偉そうに考えてしまった。急展開というにはあまりにもあっさりしてたし、前半の神の啓示を思わせるバタフライのくだりや、ダーク・シーカーのボスの進化ぶりとか、いろんなフリをばらまいていた割には、いくつかを回収し忘れたような感じだった。そしてその違和感が、先日購入したブルーレイの特典映像をみてなんとなくわかった。主人公が母娘が教会へ案内したりする、ある種宗教的な部分がかなりカットされているようであり、ラストも別のバージョンが作られていたりと、なんだか最終的にいろんなところが修正されたんだろうことが想像された。たぶんもっと科学と神を対比させた、宗教色の濃い作品だったんじゃないかなあ。これはぜひディレクターズ・カット版が出ないかなと思っていたら、今続編が計画されているとの情報が。ぜってェバイオハザードみたいな、ホラーアクション映画になってんだろうなあ(^^;)