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『グエムル 漢江の怪物』
【感想】 ★★★☆ H18.9.14
 「今年のカンヌ国際映画祭で最高の映画だ!」
ニューヨーク・タイムズのこんなコメントに、さらにその作品が韓国発の怪物映画というんだから、『グエルム 漢江の怪物』への期待は高まる一方。事前に読んだいろんな方のレビューで、評価が分かれていたが、私的には分かれるほど、傑作と呼ばれる作品を観る時に感じる、自身の映画に対する感性を試されてる気持ちが湧き上がり、映画好きの血が騒ぐ(笑)。ただの宣伝文句なのか確かめてやろうじゃないの!・・・なんてね^^;

 物語は心無いアメリカ軍の軍医の一言により、大量の劇薬が下水から漢江に流されたことから始まる。それから4年後、漢江の川岸に広がる土手の芝生は、休日を楽しむ人々で賑わっていた。カンドゥ(ソン・ガンフォ)は、売店の店番も忘れて居眠りをし、父親にしかられていた。TVに写るアーチェリー大会に出場している妹のナムジュを、溺愛する一人娘のヒョンソと一緒に応援していたカンドゥだったが、客からのクレームにより、新しくビールとスルメを持っていくことに。そこには橋を指差しなにやら騒いでいる人垣が。そしてその怪物(グエムル)は突然現れた。逃げ惑う人々の中で、本能の赴くままに襲い掛かかる怪物。カンドゥはヒョンソの手を握り逃げ出すが・・・。

 ありそうでなかった、地下や洞窟などの暗闇ではなく、真昼間の何気ない空間に違和感なく現れて、群集のなかを暴れまわる怪物のシーンが新鮮であり驚きだった。象ぐらいの、ちょうどいい具合の怪物の大きさと、人間の目線ぐらいの高さで動き回るカメラワークが絶妙で、身近な恐怖感を生み出す。「ロード・オブ・ザ・リング」や「キングコング」を手がけたという、ハリウッドのVFXスタッフの創り出したグエムルの動きは、思いのほかCGCGしてて拍子抜けだったが、よくある粘着質でもなく、人間を丸呑みするので血しぶきもなく、あまり嫌悪感を抱かない。ここらへんもまたいい具合なのである。この手があったのかと感心させられる素晴らしいシーンだった。

そして、このグエムルが娘のヒョンソをさらってから、この映画は本領を発揮していく。シーンの合間に繰り広げられる脱力系の笑いと、「エイリアン」や「ジョーズ」を髣髴とさせる緊張感とショックシーン。決めの場面でことごとく外してみせたり、笑っていい場面なのかももはや分からなくなり、どういう映画なのか頭の中が混乱していく。でもなぜかそんなとこがみょ〜に魅力的であり、家族がグズグズながらも次第に一致団結していく様は、可笑しくもありその無力さが切ない。グエムルに襲われた人々の合同葬儀の場面で、祭壇に飾られたヒョンソの写真を前に家族4人が悲しみで転げ回る姿をみて、劇場の中で一人笑ってしまっていた。現実に起こりうる、愛するものを失う悲しみと、それを守ろうとする力のたぎりを、荒唐無稽な中にほんの少しだけどリアルに感じさせる、なんとも不思議な作品なのだ。
なあんて書いたが、それでもニューヨーク・タイムズのあのコメントは、ちょっと大げさなんじゃないですかあ〜^^;
何がいけないって、あのラストは許せませんね!(爆)どうしてそういう結末なの?なんで・・・。

もやもやした気持ちでHPで本作を調べてると、あろうことか盗作疑惑の記事が。なんでもグエルムのデザインとその設定なんかが、日本のアニメの「WXV 機動警察パトレイバー」にそっくりだとか。またそういう意見に対する製作会社側のコメントを読み、さらに後味の悪さが増していく・・・。
でも最後まで泥だらけでがんばったヒョンソ役のコ・アンソちゃんや、他の俳優さんたちの熱演は、そんなことは関係なしに素晴らしかったよ^^