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『GODZILLA ゴジラ』
【感想】 ★★★★ H26.8.4
 ゴジラ生誕60周年となるこのタイミングで、ついに公開されたハリウッド版ゴジラ『GODZILLA ゴジラ』を久しぶりの劇場にて鑑賞する。昭和のゴジラをいまだに見続けている特撮ファンとしては、1998年に同じようにハリウッドで製作された「GODZILLA」の苦い記憶があり、2011年に再製作が発表された日からどんなとんでもゴジラが作られてしまうのか、かなりの不安を抱える日々だったが、どうしてどうして、当日劇場へ向かう車の中では、思わず伊福部昭の「怪獣大戦争」のメインテーマを口ずさんでしまうノリようだった。

 1999年、フィリピン。炭鉱の崩落事故により突如現れた巨大な洞窟の調査にやってきた芹沢博士は、洞窟の奥に眠る巨大生物の化石と、その生物に寄生していたであろう生物の生きた卵を発見する。しかも驚くことに卵の一つは孵化した後であった。時を同じくして日本では、ジャンジラ原子力発電所で異常振動が頻繁に発生していた。発電所に勤務するジョー・ブロディは、この異常振動と電磁波の関係を調査していたが、振動の間隔が狭まったとき、大きな振動とともに発電所は崩壊してしまう。そして15年後、再び異常振動が発生していた・・・。

 まず始まってすぐ、1954年に現れたモノクロのゴジラらしき巨大生物の記録フィルムのようなシーンが現れ、わずか数分で特撮ファンをワクワクさせるその手際の良さに感心する。さらになかなか全貌を現さないゴジラへの焦らし加減も程よく、予告編には全く出さなかったまさかのバーサスものとは知らずに敵方の怪獣が現れるという展開に、もうワクワク感が止まらない。完璧に怪獣映画している。そしてついにその超巨大な全容を現したゴジラの神々しさと、痺れる様な咆哮は、まさしくゴジラだった。ゴジラファンが望むのは、恐竜のように生々しくリアルに動く姿をただ見たいのではなく、あくまでもかっこいい姿が見たいのだ。このあたりも十分に考慮されていて、この監督相当ゴジラ作品を観ているな、なんて勝手に感激してしまった。ただ対決シーンでは、敵方の怪獣のデザインがいまいちだったこともあり、ちょっとシンクロしていなかったところが悔やまれる。それにやっと正面から激突して、気分が”いっけ〜”となったとたんに場面が人間の方に変わり、高ぶった気持ちの持っていき場所がなくなるシーンが何度かあり、少なからずストレスを感じてしまった。ここら辺は早くも決まった続編に期待するしかあるまい。それにしても、ここまでクオリティの高いゴジラを作り出したハリウッド、やはり恐るべし。日本の特撮映画のハリウッドリメイクの夢が無限に広がっていく。

あとこの作品、怪獣映画であるが、人間側のシーンも意外にしっかり作られていて、中心となる主人公とその家族の物語は置いといて、行く先々で窮地に陥る主人公の、ダイハードのマクレーンばりの不死身ぶりが結構面白く、あのパラシュート降下にいたってはもはや笑うしかなかった。さらに要所要所で登場する渡辺謙演じる博士の無能ぶりに一抹の寂しさをおぼえたが、日本の原子力発電所のシーンで、えらくジュリエット・ビノシュに似た女優さんだなと思っていたら、本人だったというサプライズがまたよかった。前作はなぜかジャン・レノだったし、フランスの俳優さんどうしちゃったんだろう。

 劇中で芹沢博士が、「人間が傲慢なのは、自然は人間の支配下にあり、その逆ではないと考えている点だ」と語るシーンがある。この作品の大きなメッセージであり、この深いテーマこそがゴジラがゴジラである所以だと、パンフレットなどに評論家さんたちの言葉を見かけるが、私にとってのゴジラはそんな小難しいことはどうでもよく、理不尽なまでの力の象徴であり、子供のころからTVで観てきたかっこいい怪獣であり、ただその暴れまわる姿に子供のころに感じた無邪気なワクワクを感じることのできる存在なのだ。今回の再リメイクのゴジラについて、このテーマの掘り下げがもう一つだなんて言われてたりするが、なんだかこういう映画にまで高尚な深読みをするのってどうなんだろうね。ワクワクさせてくれる、それだけで十分だよ。