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『ギルバート・グレイプ』
【感想】 ★★★★★ H18.1.21
ギルバート・グレイプ アメリカに招かれたラッセ・ハルストレム監督が、ハリウッドの若手俳優たちを迎えて描きあげた心に残る一本、『ギルバート・グレイプ』を観る。最初昔のCDサイズのDVDを持ってたんだけど、「マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ」のDVDがどうしても欲しくて、「ラッセ・ハルストレム監督作品BOX」を購入したため、この作品がダブってしまい最初のDVDをオークションに出品。私は今でもこの昔のDVDを手放したことを後悔してるのだ。だってこのDVDにはすごく素敵な解説が書かれ冊子が付いていたのに、BOXの方には何も入ってなかった。ペラペラの冊子だったんだけど、失くしてしまうと惜しくて惜しくて(笑)

 アイオワ州、エンドーラの静かな田舎町。ギルバート・グレイプ(ジョニー・デップ)はこの町に生まれ、24年の月日が流れていた。ギルバートは今年18歳になる脳障害を持った弟アーニー(レオナルド・ディカプリオ)としっかりものの姉、年頃で生意気な妹、そして夫を亡くしたショックから過食症になり身動きが出来ないほどに太ってしまった母親と、一つ屋根で暮らしていた。ギルバートの一日のほとんどはアーニーの世話と、母親の食費を稼ぐために費やされていた。そんな彼の元に、ある日キャンピングカーに乗って旅を続けている娘ベッキー(ジュレエット・ルイス)が現れる。自由と希望の風を共に乗せて・・・。

 ただひたすら家族へ愛を注ぎ続けるギルバートの姿が痛々しく、夢や希望、そして感情すらも閉じ込めてしまったギルバートに、アーニーの将来を思うと切なくなるという、深刻なストーリーなんだけど、観ていて不思議と暗い気持ちにはならない。それはハレストレム作品にいつもある、厳しさの中にも散りばめられたユーモアと喜びがそう感じさせるんだろう。さらにハルストレム作品のいつもどこか寒々としている景色が、本作では常にやさしい日差しが降り注いでいる。デップの長髪がなびく様に、全編を吹き渡るやさしい風にとても清清しい気分にさせられる。なんて爽やかで気持ちのいい作品なんだろう。

まず、本作でアカデミー助演男優賞にノミネートされたディカプリオの、奇跡のような演技に驚かされる。同じような障害者の役を演じると、大抵「レインマン」の様にテクニックを駆使して、いかにも作り物感が出てしまうが、ディカプリオのそれは知らない人が見たら分からないほど自然だった。凄いの一言。そして、若かりしデップの瑞々しさ。その瞳に宿す悲しみや優しさは、やはり同世代の俳優と一線を隔す深みが既に感じられる。そしてそして、ギルバートに自由と希望の風を吹き込んだベッキー役のジュリエット・ルイスの、清楚な輝きに芯の強さをも感じさせた演技力。結構ヘンテコリンな役が多い彼女の、あ〜こんな爽やかな雰囲気も出せるんだ、なんて意外な一面を見れて得した気分。
大好きなラッセ・ハルストレム作品の中でも、一番お気に入りの作品であり、改めてこの監督の、人と人を繋ぐ絆の、優しさと力強さを愛する心を感じた。
どんなに言葉を尽くしても、その作品の良さが伝えきれないくらい素敵な映画。私はこんな作品にめぐり逢うために、映画を見続けているんだよなあ。