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『ゴースト・ドッグ』
【感想】 ★★★ H19.1.20

ゴースト・ドッグ インディーズにこだわり続けるジム・ジャームッシュ監督の、長編第7作目となる『ゴースト・ドッグ』を観る。この日本刀を構えるジャケット写真から、ずっと気になっていた作品だった。しかもあのフォレスト・ウィテカーがなんでえ〜(笑)
なんでもジャームッシュが脚本の段階から、彼を主役にイメージしてたらしい。それとジャームッシュと日本刀がどうしても結びつかなかったんだけど、どうやらジャームッシュは知る人ぞ知る日本シンパとのこと、なるほどねえ。

“武士道といふは、死ぬことと見つけたり。”武士道の書「葉隠れ」を愛読し、武士道に心酔するゴースト・ドッグ(フォレスト・ウィテカー)は殺し屋である。昔マフィアの幹部ルーイ(ジョン・トーメイ)に命を救われたことに恩義を感じ、彼を主として敬い何度も殺しの依頼を実行してきた。今回もそつなく暗殺を実行したゴースト・ドッグだったが、マフィアのボスの娘がからんだことで、逆にマフィアから命を狙われることに・・・。

"ゴ〜ン”とお寺の鐘のような音が入るかと思えば、ゴースト・ドッグが盗んだ車の中で、持参のCDからラップが流れたり、武士道とラップの融合というBGMからしてヘンテコリンな映画なのだ。登場人物はなぜか武士道をこよなく愛する主人公のゴースト・ドッグをはじめ、年寄りばかりのマフィアのファミリーとか、フランス語しか分からない親友とか、個性的な人物ばかりで、そんな連中が繰り広げるゆるい笑いは、まさしくジャームッシュ・ワールド。
ただ全編に漂うハードボイルドの香りにより、笑いというよりなんとも暗く奇妙な空気に包まれるので、正直最初観た時どういう映画なのかよくわかんなかった(笑)。後からよく振り返ってみると、可笑しなことばかりで、主人公のゴースト・ドッグさえ、自分の中で勝手に解釈した武士道に心酔し、思い込みだけで生きてるという凄いキャラクター設定で、観終わってしばらくして、ああ〜あの音楽のセンスも、どこかずれた笑いもジャームッシュだと思わせる。ただ観てる最中にはそんなことがあまり感じられないという不思議な作品だった。この手の作品は好きだし得意なんだけど、今回はどうしたんだろうなあ(笑)。「ブロークン・フラワーズ」でも書いたが、ジャームッシュの描く偶然に導かれる人生というものに翻弄される人たちの可笑しさと危うさが、本作はあまりにもリアリティに欠けていたせいかなあ。

それでもマフィアの長老のボケぶりとか、お互い何を喋っているのか分からないのに、何となく意思が通じ合ってる親友レイモンとの会話の可笑しさといったらなかった。それにウィテカーが銃を撃った後に、刀を鞘にしまうように銃を振り回してホルダーにしまう様は大爆笑だった。さらに激しい思い込みに、なりきってしまった男を、客観的に外から見たときに感じる強さと可笑しみ、武士道など失われていく伝統への哀愁などもほんのりと感じられた。ただとにかく前半のテンポが悪すぎ。ファミリー内のテーブルを挟んでの会話がじつに8分ほど続くなど、もう眠くてしょうがなかった。後半に入るとベッソンの「レオン」を髣髴させるほど、らしからぬ盛り上がりをみせるんだけど、ここまでたどりつくまでにもうくたびれちゃって^^;。体調がいい時にもう一回観たほうがいいかな^^;

最後に、なぜか未だに残ってる公式サイトは必見ですよ!