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『ガス燈』
【感想】 ★★★☆ H18.2.19
 1944年のアカデミー賞で主演女優賞と室内装置賞の2部門を受賞した、イングリッド・バーグマン主演のサスペンス映画の傑作『ガス燈』を観る。DVDでいつの間にか発売されており、発見したときに驚いてしまった。ジャケットの写真が当時のポスターなのか、かなり古臭く意味不明のイラストなので、これじゃあこの作品を観たことがあるか、イングリッド・バーグマンのファンの人たちしか買わないだろうなあ。

 ロンドンのソーントン街、霧に包まれた夜殺人事件が起こる。何者かに育ての親であった有名歌手の叔母を殺害され、その悲しみから逃れるようにポーラ(イングリッド・バーグマン)は、イタリア留学に旅立つ。そして事件は犯人も動機も分からないまま10年の時が流れる。ポーラは留学先で出会った音楽家のグレゴリー(シャルル・ボワイエ)と恋に落ち、結婚するが、思いがけずグレゴリーのロンドンに住みたいという希望により、二人は死んだ叔母の屋敷で暮らすことになる・・・。

 ヒッチコック程の強烈なサスペンスは感じられないが、じわじわと追い詰められていく意地悪な展開に、ガス燈の明かりや片方だけの手袋など、小道具の使い方が抜群なのだ。ほとんどが屋敷の中で展開される、息苦しいほどの密室劇は、その巧みな演出で最後まで一気に見せる。そして迎えるラストのバーグマンの迫真の演技には、カタルシスすら感じてしまった。またモノクロ映画ということで、ガス燈に照らし出される光と影が、絶妙のサスペンス色を醸し出す。まさしく今観ても傑作といえる作品じゃないかな。

そして本作でアカデミー主演女優賞を受賞したイングリッド・バーグマンの美しさに、ただただため息が出る。整った顔立ちに溢れ出る気品は、スウェーデン出身ということもあり、当時のハリウッド女優のなかでも異彩を放つ美しさだったんじゃないかな。さらに演技についても、同じ年代の作品に登場する女優たちの、泣き笑いのハッキリした演技とは明らかに違う繊細さを感じる。次第に追い込まれていくサスペンスフルな表情は、観ている自分も息が詰まってしまう程なのだ。対する男優陣については、さして語ることはない(爆)。ただただバーグマンなのだ。この作品からバーグマン繋がりで何本か観たんだけど、私的には画面いっぱいのアップを多用し、その美しさを追及するかのように映し出された、本作のバーグマンが一番美しかった。

なぜか1940年度製作の『ガス燈』も収録されたDVDなんだけど、この中にあった映像特典に私は感激してしまった。なんとバーグマンのアカデミー賞受賞シーンが入っているのだ。もう最高〜!!
 

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