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『フィールド・オブ・ドリームス』
【感想】 ★★★★★ H26.8.10
”それを作れば彼はやってくる”
 89年4月全米で大ヒットを記録し、今もなおロケ地となったアイオワ州の小さな野球場にたくさんの人たちが訪れるという『フィールド・オブ・ドリームス』を久しぶりに観る。

 アイオワ州、夕暮れに染まるトウモロコシ畑の中で、レイ・キンセラはどこからともなく囁いてくる不思議な声を聞く。妻にも聞こえず自分だけに語りかけてくる声に何かを感じ始めていたレイに、ある日トウモロコシ畑に浮かび上がる野球場と、一人の野球選手の姿がはっきりと見える。レイは収穫前のトウモロコシ畑を潰し、野球場作りを始める。

 野球場が完成しても何も起こらず、貯金も使い果たしたせいで家計を圧迫し、すべてを手放さなくてはいけなくなったとき、娘が言うんだよねえ。「球場に誰かいるわよ」って。照明に照らしだされた緑の芝生の中にたたずむ、白いユニフォームを着たシューレス・ジョーのなんと美しくも感動的なシーンだろう。奇跡というよりはありえない話なんだけど、そんなリアルを超えた素晴らしい感動があり、その後も次々と起こる奇跡に、ラストでは幸福感に満たされた温かい涙を流している。そしてこの幸福感は、何度見ても少しも色褪せない。いつまでも心の中に大切にしまっておきたい、私の大好きな作品です。

人は年齢を重ねるごとにいろんなものを失っていく。それは自分の大切な人だったり、若いころには抱いていた夢だったり情熱だったり。そんな何かを喪失してしまった人たちに、喪失してしまったものが何かも分からなくなってしまった人たちに、この作品は奇跡のような鮮やかで、無くしたものを甦らせてくれる。どうしてこんな大事なことを忘れてしまってたんだろう。ノスタルジーに包まれた遠い記憶は、胸を締め付けるほど切なく、そして愛おしい。