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『エターナル・サンシャイン』
【感想】 ★★★☆ H17.11.13

エターナル・サンシャイン 恋の痛みを知るすべての人へ
その奇想天外な発想に驚かされた『マルコビッチの穴』の脚本家チャーリー・カウフマンの最新作『エターナル・サンシャイン』を観る。今回もこりにこった脚本で、予想できない展開と時間軸のバラバラ化は戸惑ってしまうが釘付けになる。まさしくスパイラル・ラブストーリーであり、私的にはミステリー・ラブストーリーだった。

 何気ない出逢いから、運命であったかのようにたちまち恋に落ちてしまうジョエル(ジム・キャリー)とクレメンタイン(ケイト・ウィンスレット)。熱烈に愛し合う二人だったか、いつしか些細なことで言い争うようになり喧嘩別れしてしまう。クレメンタインとの仲直りを考えていたジョエルは、バレンタインデー目前のある日、クレメンタインが自分を忘れるために記憶を全部消去したというメッセージを受け取る。ラクーナ社は脳の中の特定の記憶だけを除去するという手術を専門とする医院で、その効果は一晩で記憶除去は完了し、朝目覚めるとすべて忘れてしまうというものだった。ショックを受けたジョエルは、クレメンタインとの思い出を消し去るために、自らもその記憶除去の手術を受けることに・・・。

 こんなストーリーよく考えるなと、改めてカウフマンの発想に感心してしまう。第77回アカデミー賞の脚本賞も受賞している。そしてジム・キャリーは、恋の記憶を失っていく男の切なさを優しい眼差しで演じきる。今回のジム・キャリーにはまったくいつものくどさがなく、さらに演技派へとステップアップしたように思う。一方のケイト・ウィンスレットは、相変わらず気の強い女性(笑)の役だったが、エキセントリックな風貌にも女性としての魅力が溢れており、やはりこの女優さんは上手いです。

しかし、ラブストーリーをこんなに分かりにくくする必要があったかは疑問が残る。サスペンスやミステリーにはこういう複雑さはドラマを盛り上げるが、ラブストーリーではどうなんだろう?ジョエルとクレメンタインの二人が紡ぐ素敵な思い出の数々に、自らの体験を重ねることでロマンチック度がかなり上がるんだけど、併せてバラバラにされた時間軸を繋ぐことも考えて観ているので、そのロマンチックにどっぷり浸かることができないのだ。まあそんな心配も、もう一回観れば大体分かってるからかなりロマンチック度は上がる・・・かも。途中で気が付いたんだけど、クレメンタインの髪の色が青になったりオレンジになったりするんだけど、この色で見分ければいつの記憶かが分かるんだよね。やっぱもう一回観るか(笑)

そしてこの作品は自らの失恋の記憶を呼び覚ます厄介な作品でもあるのだ(笑)。恋愛の記憶って当然楽しい素敵な思い出ばかりじゃないけど、なにもかも含めて自分の経験であり人生。映画のように消してしまいたい苦い思い出もいつしか遠い記憶の中で、不思議だけど大切な思い出に変わっている。多少凝り過ぎてしまったが、それでも出会った二人が、リセットされてもまた引き寄せられていくという運命の絆を想わせるストーリーは、ただそれだけでロマンチックなんだなあ
時が経つにつれて次第に薄れていってしまう記憶の何もかもが愛しく思えてくる、そんな素敵な映画だった。