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『ニューヨーク1997』
【感想】 ★★★☆ H18.7.2

ニューヨーク1997 鬼才ジョン・カーペンター監督第7作目にして、私が彼の作品を追いかけるきっかけとなった『ニューヨーク1997』を観る。今回も脚本・音楽と自身で手掛け、多彩な才能をみせつける。既に1997年は遠い昔になってしまったことに、改めて年月の速さを感じるが、本作は今観ても色あせることのないSF映画の傑作といえるだろう。

 1988年アメリカの犯罪発生率は400%に達し、ニューヨーク・マンハッタン島はずべてが巨大な監獄となっていた。回りは15mのコンクリートの壁で囲われ、島へ通じる橋と水路には電流と地雷が張り巡らされていた。この脱出不可能にして一度入れば二度とは外へは出られない島に、看守は必要なく、囚人たちだけの無法地帯と化していた。ある夜大統領専用機が過激派にハイジャックされ、なんとマンハッタンのど真ん中に不時着してしまう。刑務所長ホーク(リーヴァン・クリーフ)は、伝説の犯罪の帝王スネーク(カート・ラッセル)に、罪状のすべての赦免と引き換えに大統領救出を命じる・・・。

 何が起きるかわからない囚人たちだけの狂気の世界に、たった一人で乗り込んでいく、同じく犯罪の帝王としてその名を轟かせていたスネーク。このカート・ラッセル演じるスネークというキャラクターが秀逸なのだ。囚人たちの中でも知らないものがいないほどの男で、どれだけすごいのかと思わせる雰囲気が最高にいい。長髪に黒いアイマスク、黒のタンクトップに黒のブーツという決まりまくったいでたちもさることながら、銃を構える姿のカッコいいこと。対する300万人の囚人たちの頂点に立つグリードのどれだけ恐ろしいのかと思わせる雰囲気。ジョン・カーペンターはこのどれだけ凄い事が起きるのかというムードで、観るものを最高に期待させるのが上手いんだなあ。
本作はこの雰囲気にさらにある理由から24時間以内に救出しなければならないというサスペンス色も併せ、最後までスリル満点の傑作SFバイオレンスアクション作品として、カーペンターの代表作となった。
ただこれもカーペンター作品ならではだが、ストーリーが進むにつれて作り上げた抜群の雰囲気が、中盤からラストに向かってただの力押しの展開になり、見終わった後にみょ〜なB級の印象を残す。まあ、私も含めカーペンター好きにとっては、このB級感覚がたまらないのだが・・・(笑)。

本作には映画好きが喜ぶ有名な小ネタがあるんだけど、まず特殊効果の顧問ということで、あのジェームズ・キャメロンが参加していたのだ。そしてこのとき知り合った脚本家に、当時無名だったリンダ・ハミルトンを紹介されたんだって。ここからはみんな知ってのとおり、彼女を起用して「ターミネーター」は大ヒットとなる。それから本作の紅一点の女優アドリエンヌ・バーボーは、製作時カーペンターと結婚していたことを知り、彼女が演じるマギーの最後のショットを、楽しそうに演出してるカーペンターが想像でき、なんだか楽しい気分になってしまった^^。
最後に、カーペンターにより続編の「エスケープ・フロム・L.A.」が製作されたが、・・・微妙だったなあ〜。