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『クリクリのいた夏』
【感想】 ★★★★☆ H18.8.6

 とびきりの“しあわせ”をそっと教えてあげる。
 99年にフランスで公開されるや、その幸せを感じようと200万人を超える観客を動員し、大ヒットを記録した『クリクリのいた夏』を観る。原題は「マレ(沼地)の子供たち」なんだけど、この可愛らしい邦題のほうが私は好きだなあ。久しぶりに観るフランス映画だったけど、改めて「フランス映画っていいなあ〜」って、しみじみと感じさせてくれる作品だった。

 1930年代のフランス、外地からの復員の途中、偶然に立ち寄った沼地にそのまま住み着いてしまったガリス(ジャック・ガンブラン)。日々の暮らしのためにいろんな仕事をしていたが、この日もどうしょうもないが憎めない隣人のリトンと、森へスズランを摘みにやってきていた。通りかかった馬車に乗せてもらい、沼地へ戻るとリトンの娘のクリクリが駆け寄ってくる。巻きタバコをふかしながらガリスはふとつぶやく。「なぜ俺は12年も、ここに?」

 淡い光の中で静かに息づく沼地。その沼地の暖かさに惹かれるように、心の糧を探すように集う男たち。詩情溢れる沼地の映像と、貧しくも自由に生きる人々の姿を観ているうちに、次第に心が癒されていく。
物語はクリクリの回想ということで展開されるが、主人公はガリスであり、沼地であったかもしれない。心が豊かであることの意味を、切なくなるほど思い起こさせてくれる作品なのだ。そして自分の周りの人たちを、これほど愛しく思わせる作品も珍しいね。めちゃめちゃ誰かに優しくしてあげたくなるよ。地元フランスで大ヒットというフレーズだけで、手に取った作品だったけど、出会えたことに感謝!
ああ〜、やっぱりフランス映画って、・・・いいね〜。

またガリス役のジャック・ガンブランをはじめ出演者がみんないい!。これといって事件もなく淡々と進んでいくストーリーのなかで、個性的な登場人物たち全員が生き生きと描かれている。リント役の男優さん以外、あまり知らない俳優さんたちばかりだったけど、どの人も素敵な表情に、ナチュラルでさりげない演技は、フランス映画界の層の深さみたいなものを感じる。っていうか、フランスじゃあ超有名な俳優さんたちばかりだったりして^^;。またボクサー役で出演していたエリック・カントナは、なんとサッカー選手で元フランス代表だって。それも映画と同じように暴れん坊だったみたい(笑)。調べてみるもんだねえ。

雑誌とか口コミとかじゃないと、多分出会えないような作品だけど、観終わった後の幸せ感をそっと伝えたくなる、そんな作品でした。