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『激突!』
【感想】 ★★★★ H17.10.10
 スピルバーグが当時弱冠25歳という若さで撮りあげた、今や伝説となったサスペンスの傑作『激突!』を観る。TVで何度も再放送されて、その度にその面白さに釘付けにされた。DVDでTV放送でカットされた場面もあるかな、なんて思ったが、オリジナルも90分という短さで、全部観てた(笑)。

今日もデイビット・マン(デニス・ウィーヴァー)は商談に向かうために、ハイウェイを乗用車で走っていた。約束の時間が気になったが、天気もよくラジオから流れるDJのくだらない話も心地いい。途中で前をゆっくりと走る古びた大きなトラックが道をふさぐ。対向車も何もない一本道、デイビットはそのトラックの横を追い越していく。しばらくするとさっき追い抜いたはずのトラックが猛然と自分の車を追い越して、またノロノロと前を走る。先を急いでいたので、またトラックを追い越そうとするが、今度はトラックが蛇行して前に行かせないように邪魔をする。何度も追い越そうと試みるが、トラックは蛇行を続け一向に抜かせる気配がない。デイビットはただならぬものを感じるが、不意にトラックの窓から腕が出て、先に行けと合図する。やっと嫌がらせを止めたかと、対向車線に出たとたんに対向車がそこまで来ており危うく正面衝突になりかける。デイビットはトラック運転手の悪意に恐怖する。そしてその悪意はますますエスカレートしていく・・・。

ただ何気なく追い越したトラックが、ひたすら主人公の車を追い回すという、単純なストーリーなのだが、とにかく目が離せない。バックミラーに映るトラック、振り返り際リアウィンドウに迫るトラック、けたたましくクラクションを鳴らし土煙を上げて追ってくるトラック。あらゆるアングルから撮られる臨場感と、トラックが爆進するスピード感は、本作は当初TV放送用に作られたものだったが、TVのレベルを遥かに超えている。さらに観るものを最後まで離さない抜群の演出力は、既に映画監督を意識して本作を撮ったスピルバーグにとって、単なるヒットメーカーへの序章に過ぎなかったであろう。本作は本国アメリカ以外では劇場公開されて一躍注目を浴び、そしてたった3年後の75年に、大ヒット作「ジョーズ」は公開される。

運転手の顔も現れず、どうして殺意まで抱くのかもまったく分からない恐怖。何気ない日々の中で、理不尽に事件に巻き込まれる恐怖。トラックはそんな狂った現代の蔓延する悪意の象徴のようであり、かえって昔観たときより底知れぬ恐怖を感じる。

ラストシーンを観てすぐにある作品が浮かんだ。そう、スピルバーグの『ジョーズ』。よほどこの本作のラストシーンというか、トラックが落ちていく迫力の映像が気に入ったのか、ジョーズのラストシーンがまったく一緒なのだ。後でメイキングを観ると、スピルバーグ自身が見事にそのことを語っており、”私もやるね!”と自画自賛だったのであ〜る(笑