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『Dear フランキー』
【感想】 ★★★☆ H18.2.3

Dear フランキー “パパからの手紙だけが、僕の心の支えだった。”
 その予告編を観て「これは絶対にいい!」と確信、やっと来たDVD発売日に即購入。待ちに待ったショーナ・オーバック長編第一回監督作品『Dear フランキー』を観る。そしてまずその感想は、この作品を最初に観たときに、純粋に感動できた人がうらやましい・・・。

 これで何回目の引越しだろう・・・。母親のリジーと9歳の息子フランキー、そしておばあちゃんのネルの三人はおんぼろトラックに乗り、新しい引越し先スコットランドの南西部、グラスゴーに近い海辺の町へ向かう。そんなフランキーの楽しみは、世界中を航海しているパパへ手紙を書くことだった。そしてパパから送られてくる手紙と、美しい切手はフランキーの宝物。しかし実はその手紙はリジーが愛する息子のために、ある事情で別れた父親の代わりに書いていたものだった。ところがある日、フランキーは友達から、父親が乗る船と同じ名前の船がもうすぐこの町の港に寄港するという記事を見せられる・・・。

 オープニングの美しいピアノの調べで、これは絶対にいい!とさらに確信する(笑)。息子のために一日だけの父親を雇うが、次第にほんとの親子のように心を交し合っていくという、観る前からだいたいストーリー読めていたので、ジェラルド・バトラー演じる父親役が現れるまでがかなり待ち遠しい。最初にめちゃめちゃ無愛想に現れるバトラーに,どうなるのかハラハラし、予想通り次第に幸せの予感が膨らんでいく展開に、なんとも幸せな気分に浸る。スコットランドの寒々とした中にも暖かく降り注ぐ光と、自然が息づく山々に穏やかな海辺の景色が美しい。その海辺を楽しげに走る仮想の親子を、優しいまなざしで見つめる母親のリジーの心境とシンクロし、心が優しで満たされていく。
息が止まりそうなほどのロマンチックなリジーと“謎の男”とのキスシーンでその幸せ感は最高潮を向かえ、息子と母親の愛情が染み渡る感動的なシーンで物語は終わる。う〜ん、素晴らしい映画だった・・・。
しかしエンディングの音楽を聴きながら、不思議とその余韻に浸れない自分が・・・。

見終わった後、私は感動というよりただただ疑問だらけだった。このはっきりさせない、見る側に委ね系の映画は好きなのだが、この映画はあまりにも私にとって説明不足だった。この“謎の男”やマリーのあまりにこの親子に肩入れするところに、語られないものがかなり有りそうな気がするし、なにより・・・
(ここからはネタばれ全開で書いているので注意!)

フランキーがどこでその真実を見破っていたのかが分からなかった。そして最後に宛てた手紙が誰に宛てたものなのかがハッキリしなかった。一瞬もしかしたらこの手紙は母親に宛てたものなんじゃないかと思ったが、それでは今まで観てきたものがおかしくないだろうかって、いろんなシーンを思い返して混乱するばかりで、見終わった後のなんだかしっくりこない感が、余韻に浸る余裕まで無くしていた。そしてこれは観終わってずいぶん考えて分かったんだけど、フランキーは最初っから、“謎の男”を本当の父親でないと知ってた節がある。初対面の時に、「どうしてこの本を?」ってフランキーが言った時に感じた違和感。そうするともしかしたらフランキーは、最初っからその真実を知っていて、その上で母親に手紙を書いていたとすると・・・。
私はまるでサスペンス映画を観た時のように、張り巡らされた思わせぶりの伏線を、何度もさかのぼって推理することに囚われてしまった。

その解釈を見てる側に委ねることで、作品は様々な想像の余地と心地良い余韻を与えてくれる。しかし本作は察しのあまり良くない私にとって、この物語は新しいパパを見つける、新しい幸せを見つけるという映画ではなく、最初から最後までお互いを思いやる母と息子の映画だという肝心なところに気づけなかったことが残念でならなかった。ちょっと難しすぎたなあ^^;
そして本作の本当のテーマは意外なところで、監督自身の口から語られていた。副音声の監督オーディオコメンタリーでこう語っている。
 「愛とは、見つめ合うことではなく、同じ方向を向いて進むこと」