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『デッドゾーン』
【感想】 ★★★★★ H17.5.6

 独自のグロテスク・ワールドを描き続ける鬼才デヴィッド・クローネンバーグ監督の『デッド・ゾーン』を観る。
同監督のその映像はかなり不気味でありグロであるけど、その中にはいつも社会から阻害された者たちや異形のものたちの悲しみが描かれており、人間の本質を突く作品は他のホラー映画と一線を隔します。


 本作は私的にはクローネンバーグ監督の最高傑作と断言します。ショッキングな映像に最後まで見ごたえ十分のストーリーとどれをとってもいうことなしの満点です。なにより本作はあの得意のグロテスクがほとんどないんです。(笑)
最初に『スキャナーズ』を観て異様なラストにめまいを起こし、『ビデオドローム』でホントに自分の頭がおかしくなるような錯覚を起こし、『ザ・フライ』で涙しましたけど、正直いってどれも何度も観ようとは思いません。(ビデオドロームは二度と観たくない)本作は何度観ても素晴しいです。


 交通事故により昏睡状態から5年を経て目覚めたジョニー(クリストファー・ウォーケン)は、触った相手の過去や未来が見える能力を身につける。その能力により数々の奇跡を起こすが、どれもジョニーには辛い結果となり、いつまでも癒される日はやってこなかった。そんなある日偶然握手をした上院議員候補のスティルソン(マーティン・シーン)が、核兵器のボタンを押すシーンを予知してしまう・・・。

昏睡状態の中で最愛の恋人を失い、能力を身につけたせいで最後まで苦しみの連鎖から抜け出せず、それはあたかも神にもてあそばれてる様です。クリストファー・ウォーケンも最高の演技をみせ、いつも悲しみが宿るその瞳は主人公の社会からはみ出したものの切なさを映し出します。そしてその悲しみは全編を通して観るものの胸を締め付けます。とにかく素晴しいです!

あの粘着性のグロテスクな場面からクローネンバーグはどうもって敬遠されてた人は、安心してぜひ見て欲しいです。いやいや、とにかく多くの人に観て欲しい超オススメの映画です。