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『飛ぶ教室』
【感想】 ★★★★ H21.5.4

飛ぶ教室 “8歳から80歳までの子どもに”
ドイツを代表する児童文学作家エーリヒ・ケストナーの代表作を映画化した『飛ぶ教室』を観る。ケストナー原作で他に映画化された作品は「点子ちゃんとアントン」と「エーミールの探偵たち」とがあり、「飛ぶ教室」は三本目にあたるんだけど、原作もまったく読んだことがなく、本作のこともまったく知らなかった。いつものようにいろんなレビューを探して、評価のいい本作を選んだんだけど、レビューされてる方はほとんど原作を読まれており、つくづくもっと本を読まなければと反省する。タイトルを見てすぐに梅図かずおの「漂流教室」をイメージした自分が恥ずかしい。そんな恐ろしい映画じゃなく、改めて言うまでもないけど、教室は飛びません(笑)

 少年合唱団で有名なライプチヒの聖トーマス学校の寄宿舎にやって来た少年ヨナタンは、問題児扱いされ既に6回も転校を経験し、これが最後のチャンスと決心していた。そんな不安を抱えたヨナタンを、クラスメートと音楽教師のベク先生は、温かく迎えるのだった。日々友情を深めていくヨナタンたちは、ある日隠れ家のソファーの中にあったある本を偶然発見する。表紙には「飛ぶ教室」と書かれていた・・・。

 オープニングで流れてきたピアノのメロディーに、すぐにこの作品は当たりだと確信する。少年達の穢れない瞳とひたむきな友情に、遠い昔に忘れていた感覚が呼び覚まされ、心がリセットされていくように穏やかな気持ちで満たされていく。子供の頃の出来事は時とともに薄れていってしまうが、その未熟な体と心で感じたものは、いつまでも心の片隅に刻まれ、決して消えてしまうものじゃないと思えてくる。そんなわずかに残された気恥ずかしいほどのピュアな部分を、ビシビシと刺激してくれる作品だった。そしてそんないたずらっ子達をいつも温かく見守ってくれる正義先生(ベク)の愛に包まれて、友達を思いやる優しさと信頼の心を育んで行く少年達の姿の、なんと愛おしいことか。そして月日が流れ、離れ離れになってもなお変わらなかった大人達の友情にも、思わず涙・・・。
また1つ大好きな映画ができたことがうれしい!
子供はもちろん、大人でも考えさせられることがあり、たくさんの人たちに見て欲しくなる、そんな映画だった。

偶然に見つけた「飛ぶ教室」をもとに、少年達はミュージカルを演じることになるんだけど、それがよりによってラップということで、昔の児童小説をアレンジするに当たってなぜラップなのかというミスマッチ的な気分に。しかしそれもすぐに杞憂に終わった。メッセージをダイレクトに伝えるラップっていいもんだな、なんてラストでは感動でした。

二日続けてみた後、原作本が読みたくなりすぐにネットで注文する。原作もとっても素晴らしく、児童小説ということで子供向けかと思っていたけど、私はぜひ大人たちに読んで欲しい。自分達の少年少女時代が鮮やかによみがえってくる心地よさを味わってください。