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『暴力脱獄』
【感想】 ★★★☆ H18.7.22
暴力脱獄

 1960年代後半から起こったアメリカン・ニューシネマを代表する一本、ポール・ニューマン主演の『暴力脱獄』を観る。自身も金庫破りの罪で、刑務所に2年間服役したというドン・ピアースの同名小説の映画化。原題は服役中に主人公がつけられるあだ名の「COOL HAND LUKE」なんだけど、この最悪の邦題のせいで、まず何も知らない人は見向きもしないだろうね^^;

 酔った勢いでパーキングメーターを切り落としたルークは、器物破損により2年の懲役を受ける。服役中はスプーンの保管をはじめ、何から何まで規則で決めら、もしその規則を守れなかった者は懲罰小屋に入れられた。そんな刑務所の中でもルークは規則も鼻で笑い、ある時はボクシングで何度倒されても起き上がり、またある時は囚人たちの賭けでゆで卵50個に挑戦し、遂にはすべて食べてしまうなど、その不屈の精神に、次第に囚人たちの人望が集まっていった。しかし、母親の死をきっかけに脱獄を決心する・・・。

 いつもスマートなイメージがあるポール・ニューマンだが、本作は彼の硬派な男臭さが爆発する。不敵に笑うニューマンのなんとカッコいいことか。権力に徹底的に立ち向かった男の生きざまを描く。DVDのパッケージにそんなことが書いてあった。でも私は権力というよりも、何をもにも縛られない、そして屈しない人間の誇りのようなものを感じた。
ゆで卵を食べつくし、十字架にはりつけられたキリストのように横たわる姿や、神に話しかけるシーンなど、神の啓示を思わせるシーンが度々出てくる。何かのメッセージなのだろうが、よく分からない。よく分からないが私になりに、この時代のベトナム戦争をはじめとする悩めるアメリカの、いつ終わるとも知れない暗闇からの開放を願うものだったんじゃないかな〜・・・なんて勝手に思った。
祈りも虚しく体制の力の前に、主人公は凶弾に倒れてしまうが、それでもなお不敵な微笑を浮かべて去っていたルークの姿に、人間の力強さと輝きをみる。

そんなルークに惹かれていく囚人の一人ドラッグを演じたジョージ・ケネディは、本作でアカデミー賞助演男優賞を受賞する。その人間味溢れた演技は、やはり傑作と呼ばれる作品には、名脇役の存在が大きいと改めて思わせる程、彼の好演によりラストの切なさが倍増しているのだ。ちなみにポール・ニューマンは主演男優賞にノミネートされるが、残念ながらオスカーは「夜の大捜査線」のロッドス・タイガーの手に。

ポール・ニューマンは本作以降「明日に向って撃て!」や「スティング」など、傑作に次々と出演しハリウッドを代表する俳優となっていくんだけど、そのビッグ・スターになる直前の若々しいポール・ニューマンの姿は、今見てもカッコよく、今の俳優たちにないこの時代の男優たちがまとうオーラが素敵だ。