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『チャーリーとチョコレート工場』
【感想】 ★★★☆ H17.10.14
チャーリーとチョコレート工場 「スリーピー・ホロウ」から6年、鬼才ティム・バートン監督とジョニー・デップがまたまたタッグを組み、本国アメリカでジョニー・デップ映画史上最高のヒットとなった『チャーリーとチョコレート工場』を観る。原作は1964年に出版されたロアルド・ダールの不朽の名作「チョコレート工場の秘密」で、発表から40年経った今も人気が衰えず、イギリスでは「ハリー・ポッター」シリーズ、「指輪物語」についで、”子供の好きな本”の第3位にランクインらしいが、私はまったく知らなかった。40年も前にこんなにシニカルでブラックユーモア満載の本があったことに驚く。そしてそれはまさしくティム・バートンのイマジネーションの世界にピタリとはまり、ティム・バートンに映画化されるべくして映画化された作品だった。

 町外れにある斜めに傾いた今にも壊れそうな一軒家。そこにはチャーリー・バケット少年(フレディ・ハイモア)と失業中の父と、母そして祖父母が二組の7人が、身動きさえ取れないほどの小さな部屋にひっそりと住んでいました。そんなチャーリーの家のそばに、世界で一番大きくて、世界で一番有名なウォンカのチョコレート工場があり、そこで作られるチョコレートは毎日世界中に配送されていました。しかしその工場は15年前に閉鎖され、それ以来人の出入りはまったくなく、どうやってチョコレートが作られているのか、みんなの謎でした。そんなある日、チョコレートの中に入った”金のチケット”を引き当てた5人の子供とその保護者を、工場の中に招待するというニュースが発表されました。次々と引き当てられる中、残りの”金のチケット”はあと一枚にとなり、あきらめかけていたチャーリーは偶然道で拾ったお金を握り、お店の中に入りチョコレートを一枚買いました。そして急いで包装を破った中には、キラキラと光るチケットが・・・。

 チャーリー少年のあまりの健気さに、チケットを手に入れたシーンでいきなり泣いてしまうという意外な展開に(笑)。生意気なガキ達に、振り回される親達と、今回もかなりエキセントリックに作りこんだジョニー・デップと次々に登場してくる魅力的なキャラクター達。
さらに今回もそのイマジネーションが炸裂する、バートン独壇場のミラクルワールド。このひとの色彩感覚と造形のセンスはホントずば抜けてる。そして今回一番強烈な印象を残したウンパ・ルンパ。工場の中で働いている、密林で暮らす身長75センチの一族なんだが、全員同じ顔してるのだ。このウンパ・ルンパが大勢で歌い踊るシーンのなんという楽しさ。いつしかすっごい幸せな気分になってた。
最初の子供が脱落した時点でほぼストーリが見える。ある理由から人間関係を築けない変人ウォンカは、チャーリー少年の優しさによって救われるんだろうけど・・・、うんうん、間違いない。これはすごい映画が出来たんじゃないかという予感が膨らみまくる・・・。

観終わって私は一言。そういえばチャーリーって工場で何にもせずただ見てただけだじゃあ・・・ない?それに悪い子はひどい目に会い、心優しい少年だけが幸せになる。なんという直球ど真ん中のあま〜い展開(笑)ええ〜、ホントにあのブラックのバートンと反逆児のデップが組んだ作品なの、これ?まあ反対にいえば、これだけストレートな話をこんなに鮮やかに、そして最後まで幸せな気分でみせてくれたのは、このコンビだったからなんだろうけど。
バートンのこの”家族が一番”っていうあまりの優等生振りが意外であり、かなりなんだかな〜ていう気分に。そして一番残念なのは、チャーリーと一緒に工場へ入ったおじいさんの、ウォンカは自分のことを憶えててくれたんだろうか?ってエピソードがまったく生きてなく、おじいさんも途中から忘れられた存在に。
確かに映像センスは素晴しく視覚的には大感動だったが、魅力的なキャラクターを活かしきれてない物足りなさと、らしくない展開にしばらく唸る、う〜〜ん・・・。

チョコレート型のパンフレット(これ結構気に入ってる)に、原作本の翻訳家の方の記事があって、その作りこまれた世界に感心されてたけど、たぶんストーリーが原作と微妙に違うと勝手に確信し、今モーレツに原作が読みたい(笑)