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『未来世紀ブラジル』
【感想】 ★★★☆ H23.7.4
 「フィッシャー・キング」「12モンキーズ」の鬼才テリー・ギリアム監督の『未来世紀ブラジル』を観る。「ブレードランナー」と並ぶ80年代のSFカルトムービなんていわれる傑作作品なんだけど、そのシュールでシニカルな演出は、実に難解なんだよなあ(^^;)

 20世紀のどこかの国。徹底的に情報管理された社会。情報管理局に勤務するサムは、いつからか自分がヒーローとなり、囚われた美女を救出するために、空を飛んだり、巨大な鎧武者と戦う夢を見るようになる。ある日情報局のミスにより、テロリストとして誤認逮捕してしまったうえに、死なせてしまった男の住むアパートを訪れたサムは、偶然夢であった美女に出会う・・・。

 大傑作という人もあれば、なんだかよく分からないという人もあり、はっきりと評価の別れる作品。私も正直よく分からないところもあるんだけど、とにかくテリー・ギリアムのイマジネーションが溢れ出した不思議な世界は、とんでもなく凄い作品だというオーラをひしひしと感じる。彼の頭の中を、ただ溢れ出すままに映像化したものなんだから、私なんか理解できなくて当たり前なのだ。管理社会を痛烈に批判してるんだとか、そんなメッセージもあるんだろうけど、とにかく観ている間、悪夢を観てるように気分を逆なでされ続け、観終わった後は悪夢から目が覚めたような後味の悪さと、悪夢から開放されたような不思議な安堵感に包まれる。この悪夢にまみれることが、本作の魅力であり、ギリアムの真骨頂なんだろうね。こんな気分にさせられる映画って、ちょっとないよ。

ただやはり管理された社会の権力というものへの、心の通わない冷たい理不尽さと、いつの間にかそれが当たり前のように体制に慣らされて、何も感じなくなる恐怖が、空想の世界を描いているはずなのに、この現代社会にいる今この瞬間も身近に感じてしまうことに恐怖してしまう。

しかしこの作品がどんなに凄い作品でも、あのショッキングなラストを見せられたら、まあ当分見なくてもいいね。本当にあのマ○クが夢の中に出てこないことを祈る(^^;)