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『ブラス!』
【感想】 ★★★★ H17.12.30
ブラス! “音楽は生きる喜びであり希望だ!”
 炭鉱夫の余暇活動として結成されたイギリスの歴史あるブラスバンド、グリムリー・コリアリー・バンドの実話を題材に映画化され、日本でも超ロングランを記録した『ブラス!』を観る。もはやイギリス映画の定番となった感がある、炭鉱の閉鎖問題で揺れる街を舞台にした人間ドラマ。この炭鉱ものは本作をはじめ「フル・モンティ」や「リトル・ダンサー」とどれも傑作であり、どれも貧困がベースにあることで、日本人好みなんだよねえ。

 街は今炭鉱閉鎖の波に揺れ、炭鉱夫達そしてそれぞれの家族はみな不安に包まれていた。そんな中でもバンドの練習は欠かさない炭鉱夫達がいた。このバンドをこよなく愛し、厳しく彼らをまとめるリーダーで指揮者のダニー(ピート・ポスルスウェイト)のもと、それぞれ問題を抱えながらも、彼らはロイヤル・アルバートホールで開催される、全英選手権の優勝を目指していく。

 こういう映画を観るといつも思うことがある。楽器ができる人ってうらやましいなあ。音楽ってやっぱり素晴らしいなあ。なんといってもそれぞれの登場人物から、音楽を愛してやまない心が凄く伝わってくるのだ。失業の危機に暗い影に覆われるが、演奏している彼らの表情はどれも輝いていて眩しい。どんなに苦しくても、自分達にはこの音楽がある。それが自分達の喜びであり誇りなんだ。音楽からそんな気概みたいなものがひしひしと伝わってくる。
演奏シーンはどれも素敵なんだけど、私の一番好きなシーンは、病気で倒れたダニーの病室の外で、バンドのみんなが名曲「ダニー・ボーイ」を演奏する場面があるんだけど、その澄み渡る調べにいつしか涙が流れていた。いやあ〜、やっぱり音楽っていいわあ〜。

主演のピート・ポスルスウェイトをはじめ、出演者はユアン・マクレガーと紅一点のタラ・フィッツジェラルドを除いたらすべて無骨なおっさんばかりなんだけど、このおっさんたちの雰囲気がいいんだなあ。イギリスのベテラン俳優さん達なんだろうけど、その面構えは炭鉱一筋に歩んできた誇りに満ち、暗い話なんだけど暗くならない力強さがあって、観ていて不思議なパワーを与えてもらったような気がする。

大感動!っていうんじゃないけど、どこまでもバンド活動に励む人々の姿はさわやかで、最後のエンドロールの音楽が終わるまでじっと耳を澄まして、いつまでも余韻に浸っていたくなる、そんな素敵な作品だった。