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『ビッグ・フィッシュ』
【感想】 ★★★★☆ H17.10.2
ビッグ・フィッシュ ダークな世界で繰り広げられる大人のファンタジー、ティム・バートンの作りこむ世界はいつもイメージはブラックだった。しかし何か心境の変化があったのか、きらめくほど眩しいファンタジー作品を作り上げた。新境地にチャレンジしたティム・バートンの『ビッグフィッシュ』を観る。1988年にアメリカで発行されベストセラーとなったダニエル・ウォレスの小説『ビッグ・フィッシュ』の映画化において、監督候補にスティーブン・スピルバーグなどが挙がってたようだけど、やっぱりバートンでよかったように思う。

 エドワード・ブルーム(アルバート・フィニー/ユアン・マクレガー)は、息子ウィルに子供の頃から自らの波乱に満ちた人生を語り続けていた。しかしそれはどれも現実離れしていて、見た者の死に様を写す目を持つ魔女に、一緒に旅をした巨人などお伽噺のようなものだった。そんなホラ話ばかりをする父を周りのみんなは愛したが、いつしか息子はそんな父を疎ましく思い、遠ざけていった。そしてウィルはある日父が病に倒れ、残された時間がわずかだと知らされる。ウィルは最後に父と理解し合える事を願い、真実の父の姿を追い求める。


 初めてこの作品を観たとき正直よく分からなかった。現実の世界と父のホラ話が交差し、目くるめく映像美が展開される。確かに素敵な映画だったが、肝心の父と息子のデリケートな部分は表現しきれていたのか。ホラ話の中に込められた人生の素晴しさ。しかし、これはすべての人たちに向けられた父の無償の愛であり、そこに息子の姿はない。当然私も息子が感じたと同じような違和感を感じ、その息子の微妙な心の葛藤を描ききった監督の力量は感じたが、感動というところへは行けなかった。予告でも見ていた水仙畑のシーンも、もう少しロマンチックなシーンを期待していたのに・・・。

そして2回目。最後の最後に、この作品の本当の素晴しさがわかった様な気がした。今にも命の炎が燃え尽きようとする父エドワードに向かって、戸惑いながらも必至に作り話を語りかける息子のウィル。作り話と分かっているが、ウィルの話に楽しそうにうなずくエドワード。あれ、もしかしたらエドワードは、今までこの時のウィルのような気持ちで息子に物語を語っていたんじゃないんだろうか。そう思った時、この数々のエピソードがすべて繋がったように感じて、気が付いたら涙が流れていた。優しい愛に包まれた素敵な映画に変わった瞬間だった。
そして見事にティム・バートンにやられた瞬間だった。